「ヤクルト３－４阪神」（２６日、神宮球場）

　神宮で迎えた開幕戦デビュー。阪神ドラフト１位の佐藤輝は「初戦ですし、気持ちも高ぶっていた」と振り返った。記念すべき日にＨランプをともすことはできなかったが、球団史上に残る記録を刻んだ。怪物ルーキーの実力を初戦から証明した。

　魅せたのは二回無死一、三塁。９９８４人のファンが見守る注目の初打席、絶好機で向かった。フルカウントからの６球目、１４３キロ直球を強振。打球は左翼・青木のグラブに吸い込まれたが、三走・大山は悠々生還。今季の“セ界初打点”ともなるおまけ付きだ。

　開幕戦に出場した新人野手が初打席初打点をマークするのは、球団史上初の快挙。「初打席でしたが、普段通りの気持ちで立つことができた。なんとか先制点を取れたので、それは良かった」。遊撃手と二塁手が極端に右寄りに守る“サトテルシフト”が敷かれたが気にしない。

　「シフトだから、そこに打つとかはなくて、いつも通りしっかりというところ。今はそう考えています」とあくまで自然体で打席に立つことを意識していたという。結果として３打数無安打に終わっただけに「しっかり切り替えて次に準備したい」と次戦を見据える。

　キャンプ中、父・博信さんから電話で掛けられた言葉がある。「感謝の気持ちを忘れてはいかんぞ」。ユニホームを着ている首脳陣や選手だけでなく、活躍を陰で支えてくれる裏方がいる。関わる全ての人たちへ感謝の気持ちを持つ大切さを知り、肝に銘じてグラウンドに立っている。

　「契約金をもらって、それを年俸で獲れる選手にならんと一人前になられへん。そうじゃないと恩返しは絶対にできない」と近大時代の恩師・田中監督からは声を掛けられた。「活躍してなんぼの世界」と佐藤輝自身も十分に理解している。その恩返しは、この日から本格的に始まった。

　七回の右翼守備で足を滑らせる場面もあったが、問題はないという。初安打、初本塁打は２７日以降に持ち越し。「明日、いい日になるように」と佐藤輝。伝説の幕開けは球団史上初の快挙達成。上々のスタートを切った。