阪神・糸井 3番復帰でチャンスメーク&マルチ 膝の痛みも気にせずに全力疾走

 1回、サンズのタイムリーで二塁から本塁へ激走する糸井
3枚

 「阪神5-3DeNA」(21日、甲子園球場)

 黄色く染まったアルプス席から、「糸井コール」が地響きを立てる。聖地に戻った大歓声は、阪神・糸井の鼓動を熱く打った。スタンドに戻った活気は、スイングに力強さを加えた。6試合ぶりのスタメン出場、そして10日・DeNA戦以来の3番。一戦必勝の戦いが続く中、意地のマルチ安打が勝利を呼んだ。

 「1点ずつ返していくことが大事。打つことができてよかった」

 初回、2死で迎えた打席。2球目、糸井は京山のカットボールを狙った。左翼線を破って得点圏に進むと、続くサンズの打席だった。遊撃後方の打球に、迷わず三塁を蹴る。痛みを抱える膝を気にしない全力疾走。先制のホームを一気に駆け抜けた。

 昨年10月。痛めた左足首にメスを入れた。完全復活を誓ったシーズン。万全の状態が整わない中、なかなか調子も上がらない。ベンチで戦況を見守る日々。代打出場や出番のない日もあった。13日の広島戦では移籍後初めて7番に降格。それでもスタッフは「表で悔しそうな表情は見せなかった」と証言する。

 オフのリハビリ過程で野球の原点に触れた。車いすソフトボールの練習に参加。年齢や障害の有無にかかわらず、楽しむことをテーマにした「ウィルチェアースポーツ」で下半身不随や、脊髄を損傷した人たちとも交流した。小学生の時、初めて甲子園のアルプスからプロ野球選手を見て夢を抱いた、あの日の記憶がよみがえった。

 「野球を楽しんでいる姿に、思い起こされることがあった。リハビリのためだけど、それ以上のパワーをもらいました」。39歳。スタメンを外れても練習量は増えた。試合前後の打ち込みに、ウエートトレ。野球ができる喜びが背中を支える。

 五回には2死一、二塁から左前適時打。芯を外れた打球に浜風が味方し、左翼・佐野の前でポトリと落ちた。出場4試合ぶりのマルチ安打に、矢野監督も「嘉男も吹っ切れていく」と上昇気配を感じ取った。残り41試合。終戦にはまだ早い。聖地に戻った大歓声が、超人復活の序章になる。

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