気持ちを切らすな!!8戦勝ちなしの西へ レジェンドOBがエール

 矢野阪神が、球宴前の“試練の9連戦”を4勝5敗で終え、借金2を抱えて後半戦に挑むことになった。首位巨人とは9・5差で、2005年以来、14年ぶりのリーグ優勝はほぼ絶望的な状況。貧打解消へ緊急獲得したヤンハービス・ソラーテ内野手(32)の一日も早い合流を待ちたいところだが、現状はリーグ随一の投手力に頼らざるを得ない。現役通算320勝のレジェンドOB・小山正明氏は、後半戦のキーマンに目下8試合勝ち星なしの西勇輝投手(28)を挙げ「気持ちを切らすな。辛抱や」とエールを送った。

  ◇   ◇

 球宴前の9連戦最後のカードとなった甲子園での巨人戦。ゲーム差「6・5」で追いかける矢野阪神にとって、8日の初戦は是が非でも取りたい試合だった。梅野に代わってスタメンマスクをかぶった坂本の同点弾&勝ち越し打も空しく、信頼感抜群だったジョンソンが八回に決勝点を献上し、無念の敗戦。力尽きたように2、3戦目も落とし、今季巨人に3度目となる「3連戦3連敗」を食らってしまった。嘆き、呻き、悲しみの声が充満した甲子園…。今季の命運をかけた3連戦だっただけに、疲労感がこれまでとは全く違う。借金「2」が倍、いや十倍の重さで背中にのしかかったような感じがしてならない。

 同じ思いを阪神のレジェンドOB・小山正明氏も持っていた。7月28日で御年85歳を迎えるご意見番は、8日の初戦を西宮市内にある馴染みの小料理店で見ながら、虎の勝利を祈念していた。「広島3連戦3連勝(5~7日・甲子園)はもらったようなもの。問題はこの巨人戦や」と力を入れて見たものの、接戦に惜敗。最後まで「阪神が勝つよ!!」と言って疑わなかっただけに、16残塁の拙攻は体にこたえたようだ。

 -結果的には、初戦(8日)に勝てなかったことが大きく響きました。特に、4番・大山のブレーキが痛かったです。

 「その前の広島戦(15回戦・7日)で矢野監督が大山にバントさせたやろ。僕は『何考えとんねん!!』と思った。仮にも自分が育てようとしている4番やないか。バントさせんならんほど状態が悪いんなら、4番から外したらええ。それをせんとあの局面でバントやなんて僕には考えられんよ。そんなことがあってのあの試合や。走者を置いての3打席連続三振はちょっと情けなくなったが、それにしても16残塁はひどすぎるな」

 -塁に出れども本塁遠し…でした。1本出ていれば状況はまるで違っていたし、2、3戦目につながることもなかったと思われます。

 「再三チャンスを作りながら、それを生かせない。一方の巨人は安打数は阪神より少ないのにきっちり点を取って勝ち切った。悲しいかな、力の差ははっきりしとると言わざるをえん。2戦目(9日)の八回裏、同点機に糸井が完全なボール球に手を出して空振り三振。あのシーンが今の阪神打線の象徴と言えるやろう」

 -今一番当たっている糸井すらボール球を振ってしまうのだから、他の選手は何をか言わん、ですね。しかし、これでは投手陣はたまったもんじゃないでしょう。初戦の西なんか8試合勝ち星なしですが、うちの6試合は6回以上投げて失点も3点以下です。阪神の投手陣の中では最も安定感ある投球をしながら、3勝7敗と大きく負け越しているのが現状。小山さんはこれをどう見ますか?

 「口には出さんやろうが、本人にとってはたまらんと思うよ。彼を見とったらいつも思い出すんや、あの年の“悪夢”を…」

 そう言って氏が振り返ったのが、今から58年前の1961(昭和36)年のシーズンだった。押しも押されぬ阪神のエースだった小山氏はこの年、46試合に登板し、防御率2・41の成績を挙げた。ところが勝ち星は11勝22敗と大幅な負け越し。点は取られないのに負けが込む、という今の西に近い状況に陥っていた。これをして“悪夢”と呼んだのだが、そんな経験を持つだけに、西の現状は手に取るようにわかるという。

 -負け数が勝ちの倍あったその1961年ですが、マウンドにいた時の心境はどうだったんですか?

 「遠征先の宿舎で、よく渡辺省さん(省三氏=1953~65年在籍・通算134勝96敗、防御率2・44)と同部屋になったんやが、ある試合で負けて帰ってきて省さんに言うたんや。『(打線は)何とかならんかな』って。省さんは笑うだけやったけど…」

 -今ではQS(クオリティ・スタート=先発投手が6回以上を3自責点以内に抑えた時に記録される)という概念がありますが、当時はまだなかったから大変だったでしょう?

 「そうやがな。オフの契約更改交渉でも、勝ち負けの数字しか評価の対象にならんかった時代やからね」

 -そんな“悪夢”を経験してきた小山さんが今の西にかける言葉は?

 「とにかく気持ちを切らせたらあかん、ちゅうことや。辛抱せなしゃあないやろな。ここまでよく投げてきてるんやし、これからも自信を持ってマウンドに上がってほしいな」

 首位巨人の背中はもう見えない位置まで下がってしまったが、まだシーズンは終わったわけでも何でもない。小山氏は後半戦のキーマンに現役時代の自身を重ね合わせた西を挙げ、ミラクルな逆襲を期待した。「彼に勝ち星が付けばまたチームに勢いもつく。そんな状況を生み出すのが矢野監督らベンチの責務やろう。これからはCS圏内に残ること。それを最大な目標にしてやるべきやね」。レジェンドの“金言”を西はどう聞くか。そして矢野監督は最大の試練をどう乗り越えるのか。矢野阪神の長く、厳しい夏が始まろうとしている。(デイリースポーツ・中村正直=1997~99年阪神担当キャップ、前編集長、現販売局長)

 【販売局インフォメーション】

 ・今週末の13日(土)は東京ドーム、翌14日(日)は甲子園で「マイナビオールスターゲーム2019」が開催されます。デイリースポーツではもちろん試合を詳報しますが、注目は前半戦に期待以上の活躍を見せたあの阪神選手の手記。広島版では今季ブレークした若手左腕の手記を掲載します。乞うご期待!!

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