大山の技術の引き出し 打席で取り組む工夫とは
独自の視点からプレーの深層に迫る虎目線-。開幕から6番に座り、チームトップの8打点をマークしている大山悠輔内野手(23)が、打席の中で取り組む“工夫”にスポットを当てる。8日の中日戦で10球粘った末に押し出し四球を選んだ場面。グリップの右手と左手の間に指1本分のスペースを作り、バットの操作性を向上させる工夫を施した。長いシーズンを戦い抜くために数多くの「引き出し」を作っている。
外角のスライダーをしっかり見極めると、大山は雄たけびを上げ、左手で強く拳を握った。8日の中日戦、同点の七回2死満塁から奪った一時勝ち越しとなる押し出し四球。わずか2球で又吉に追い込まれたが、厳しいボールはカットし、逃げるスライダーをきっちりと見極めた。息詰まる勝負の最中で背番号3は、ある工夫をしていた。
それはグリップの握り方-。2球目までは強く振ることを意識していたが、追い込まれるとバットを持つ右手と左手の間に指1本分程度のスペースを作った。一般的に両手を離すことでスイング力は落ちるが、バットのヘッドが返りやすくなるなどの操作性が増す。プロ野球ではなかなか見かけないが、その理由を本人はこう明かした。
「操作性を上げるというか、6日の試合で同じようにグリップを空けて持って、レフトへいい打球を打てた。その感覚がすごくよかったので、やってみようと。ずっとこの持ち方をやるわけではないですが、自分の引き出しとして考えていければ」
確かに6日の中日戦でも、1点を追う九回、田島に対して追い込まれた大山は指1本分のスペースを作っていた。内角低めに落ちるツーシームを左翼線へ引っ張り、二塁打で出塁。一打同点の好機を作った。
コース的にも強引に引っ張ればファウルになってしまうゾーン。そこをフェアグラウンドに弾ませることができた要因を、本人はグリップの持ち方に見いだしていた。2ストライク後の対応に、自信と根拠を持つことができた一打。2日後、それが“技術の引き出し”となり、打席の中で心境の変化へとつながる。
「今までだったら、あの場面でボール球に手を出して行ってたかもしれないけど、思った以上に冷静になれた」
ただ単に“結果が出たからよかった”ではなく、自分自身で打席内容を分析し、それを積み重ねることでレギュラーへの階段を駆け上がっている大山。実際に試合前の打撃練習でもさまざまな打ち方を試し、全体練習開始前の早出特打も皆勤を続けている。
ハードなシーズンでも豊富な練習量を消化できる体の強さ。そして長いシーズンを見据え、今、やらなければいけないことを考え、実直に取り組んで行く姿勢-。そこにこそ、大山の限りない可能性を感じさせる。
関連ニュース




