原口、1カ月ぶり7号ソロ 虎党に報いるバックスクリーン弾
「阪神1-6巨人」(19日、甲子園球場)
フルスイングで捉えた打球が甲子園の夜空を舞った。0-6の五回2死。内海の外角140キロ直球を、阪神・原口は見逃さなかった。バックスクリーンに吸い込まれる豪快な一撃は、6月20日・オリックス戦(甲子園)以来、出場15試合ぶりの7号ソロ。声をからし、応援し続けてくれる虎党に報いる一発だった。
「ファンの方を少しでも喜ばせたいと思っています。こんなにもたくさん(球場に)入ってくれて。選手全員が、そういう気持ちでやっています」
甲子園での本塁打は、チーム全体でも6月20日以来。約1カ月もの間、プロ野球の醍醐味(だいごみ)とも言える本塁打を本拠地のファンに見せられていなかった。原口は「そういう気持ちで打席に入って、一振りで決めることができて良かったと思います」と胸を張った。
そんな青年を、天国から優しく見守る人がいる。昨年9月に脳出血のため死去した中村勝広GM(享年66)だ。
同年4月のウエスタン・オリックス戦。中村GMが、バックネット裏で熱視線を送っていた試合だった。当時育成選手だった原口は、鳴尾浜のバックスクリーンにぶち当てる豪快な一発を披露。支配下選手返り咲きを猛アピールする背番号124に、中村GMはこんなことを言っていた。
「彼の打撃は(他の選手と比べて)抜けてるよ。あいさつ、礼儀とかも、素晴らしいものを持っているしな」
戦力外通告も覚悟したオフ、育成契約を更新することが決まった。そして今、打率・325と持ち前の打撃で苦境に立つチームをけん引している。「僕も勝負なので。競争の中で、打てて良かったです」。チャンスをくれた恩人は、天上から背番号94を見つめている。タイガースを救ってくれ-。原口には、走り続けなければいけない理由がある。