球児 先発転向で新球・スライダー試投
「阪神春季キャンプ」(8日、宜野座)
阪神・藤川球児投手(35)が、室内練習場で行った投球練習でスライダーを試投した。リリーフ時代にはほとんど投げることのなかった球種だが、先発での調整を進める中で“新球”として採用することを検討。かつての剛球投手というイメージにはこだわらず、新しいスタイルを確立する。
剛球投手としてのプライドを捨てたわけではない。ただ、球をスライドさせる必要性を感じただけだ。昼過ぎの室内練習場で行われた、何げない遊びのようにも見える投球練習。実はこれこそが、藤川が前日に提案し、先発としてのスタイルを確立するために実施した重要な練習だった。
平地ではあるが、鈴衛ブルペン捕手を座らせ、右打者役で金村投手コーチが立った。そして投じたのは、今までのイメージからは想像しがたいスライダー。同コーチの「今のはカットボールみたいだった」「手元で伸びる感じ」といった感想を参考にしながら、約15分にわたって感覚を試した。
“新球”については「いちいち言うもんじゃない」と、秘密主義を徹底。それでも「試合で投げてみないといけない。バッターに投げていく中で、いろいろ見つけなくてはいけない」と今後は実戦で試していく意向を口にした。
1イニングに全力を注ぐリリーフと、長いイニングを投げることが求められる先発とでは、投球スタイルが違って当然。リリーフ時代は分かっていても打たれない直球があったため、変化球はカーブ、フォークぐらいだったが、先発では全球全力とはいかない。投球の幅を広げるためにも、もう一つ球種が欲しいところだ。
現役時代はスライダーを持ち球にしていた金村投手コーチは「僕の腕の振りと球児の腕の振りは違うけど、どんどん聞いてきてくれる」と、どん欲な姿勢を称賛。「投げた瞬間スライダーという軌道だとバッターにすぐ分かってしまう。ストレートの感じで来て、ふっと曲がるイメージ」と、理想とする変化の仕方を説明した。
この日は「フォークの神様」こと杉下茂氏が阪神キャンプを訪問。藤川は「今年も会えてうれしい。『お前を見たかった』と言っていただいた」と再会を喜んだが、タイミングが合わず、投球を披露することはできなかった。神様ですらまだ知らない。先発投手・藤川球児の完成形を。