藤浪、完封で14勝!中村GMへ弔い星

 「阪神2‐0巨人」(28日、甲子園球場)

 弔いの1勝だ。阪神・藤浪晋太郎投手(21)が8安打されながらも、要所を締めて完封勝利。今季14勝目でリーグトップに並んだ。23日に中村勝広GM(享年66)が急逝した後、初の本拠地試合。試合前に黙とうをささげ、喪章をつけて臨んだ一戦で、若きエースが意地を見せた。

 照れ隠しの表情で、ゲームセットの瞬間を迎えた。2点リードの九回、2死二、三塁。打席に入る前、原監督のゲキを受けた大田のゴロは、藤浪の目の前に転がってきた。ボテボテの打球を大事に捕球すると、一塁へ近づきながら、丁寧に下投げでトスした。

 「ホッとしました。トスすれば間に合う方向の打球だったので、落ち着いて。抑えたというより、ラッキーという感じでした」

 今季4度目の完封で14勝目。8安打されながら、138球を投げきった。守護神・呉昇桓が不在の中、初回に2点の援護をもらうと、打たせて取る投球を展開した。先頭を許した二回、四回は狙い通りの併殺。「球もいってなかったし、正直バテバテだった」という終盤はピンチの連続だった。

 2点リードの八回、2死一、二塁。坂本を迎えたところで和田監督が歩み寄ってきた。「しっかりいけ!」。指揮官の言葉にうなずき、勝負球に執念を込めた。思いが通じたのか、左翼後方へ舞い上がった打球は、フェンス際で失速した。

 「なかなか監督さんが来られることがないので。気合が入る?間を取るという行為だけなので(笑)。珍しいことなので、ちょっとうれしかったです」

 負けられない一戦だった。中村GMが23日に急死してから、初の甲子園。故人を悼みスコアボード上に半旗が掲げられ、試合前は黙とうをささげた。両軍は喪章を袖につけて、今シーズン最後の伝統の一戦を戦った。天国へ届けた弔い星。藤浪も思いを口にする。

 「自分のドラフトのくじが当たった瞬間、後ろのテーブルでガッツポーズしてくださったのが印象的で、すごく自分の入団を喜んでくださった方なので。そのためにと思いましたし、いいピッチングをして勝ったのは良かったと思います」

 中村GMの願いがかない、エースに成長した右腕は、2年ぶり2度目の“CS開幕投手”も内定している。次回は今季最終戦10月4日・広島戦(甲子園)に先発予定。その後、他の先発投手はみやざきフェニックス・リーグで調整登板するが、藤浪は中5日で、同10日のCSファーストS初戦に向かう見込みだ。ただ「あと3試合、自分は1回しっかり終えてから考えたい」とシーズンに集中。10年ぶりの悲願は逃したが、エースは最後まで、猛虎の意地を示すつもりだ。

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