【天龍夫人手記】私も聞き取れない…

 「プロレス・天龍源一郎引退興行」(15日、両国国技館) 

 “ミスタープロレス”天龍源一郎(65)が新日本のIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(28)と引退試合を行い、大相撲時代から通算52年間の格闘人生を終えた。夫人の嶋田まき代さんが、夫の引退を受けてデイリースポーツに手記を寄せた。

  ◇   ◇

 結婚から33年間はあっという間でした。お相撲もプロレスもまったく知らないまま一緒になって。当時『プロレスラーって何人いるの?』って聞いたら、『女子を入れて100人いない』っていうから、この人は1等賞を目指せるって思いました。今は1番じゃなくて全体の30、40番でも、1番の扱いをしようと。だから豪快なことをやっても怒ったこともないし、すねて実家に帰ったこともありません。

 結婚直後から4、5年は特にやりくりが大変でした。1試合のファイトマネーの3倍、4倍を飲み代に使うから。私も働いたし、質店に通ったりしました。質店では保険証には全日本プロレスって入ってるから、免許証を出して気をつかってね。『夢を売る商売』がうたい文句だからしょうがない。天龍からもらった時計や指輪も持って行きましたよ。お店の人に『流さないでね』って言いながら。

 ウチでは娘(紋奈さん=天龍プロジェクト代表)が(83年に)生まれても天龍が1番でした。面と向かって大げんかしたことは1回もありません。もちろん、手を上げられたことはないですし、1回でもされたら離婚と思っていました。昨日(引退試合前夜の14日)もいびきをかいて普通に寝てましたけど、家では何もできないです。『パンツどこ?』『Tシャツは?』『カミソリは?』って毎日。電球を替えたりするのも私。最近、ようやく手伝ってくれるようになって、電球を替えるために私が乗ったイスを支えてくれました。携帯電話はもちろんガラケーですけど、メールは打てて、絵文字も入ってくるかな。

 滑舌のことを言われてますけど、私も聞き取れないときがあります。SWSができたころからガラガラだから、20年は経つかな。昔はもっときれいな声で、歌も歌えたのにね。ラリアートとかの技をのどに受けたのと、お酒が原因でしょうね。

 引退は会見(2月9日)の1カ月前くらいに聞いたのかな。「やめようと思う」って。私は「そうだね。悔いがないなら、それでいいんじゃない」って言いました。会見後に私の病気のことを理由にしたと言われてびっくりしました。『今度は支える番』って言ったと知ったときは、正直な気持ちなんだろうなって思いました。ずっと元気だった私が2010年の乳がんから去年は心不全になったり、胆のうを取ったり、今年も糖尿で緊急入院したりが続いて。彼のショックの方が大きかったと思います。

 それまで引退という言葉は1度も聞いたことがありませんでした。『やめると口走ったら、2度と上がらないで。1、2年したら復帰なんて絶対に嫌』という話は本人に言っていました。冗談で『車イスとか歩けなくなるのは困る。私は体が大きい人を動かせない。自分で動けるウチにやめないとね』という話もしてはいました。今思うと、もう少し早くやめても良かったのかな。(12年の)脊柱管狭窄症の手術の後、『天龍源一郎、ここにあり』というのをもう1度見せたかったんでしょう。体力の限界ではありません。内臓などはまったく問題なく、お医者さんからは『あと30年は生きるよ』って言われていますから。

 力士になるとき、プロレス入り、その後も全日本をやめてSWSに行ったり、こんなに分岐点のある人はいないんでは。(ジャイアント)馬場さんが(99年に)亡くなったときはショックを受けてましたね。全日本時代は天龍が馬場さんの秘書みたいな感じで、いろいろアドバイスもしてましたから。でも、(退団した後で)関係がうまく修復できていませんでした。お葬式に行っても追い返されるだろうし、周りが嫌な顔をされると思って、テレビで馬場さんの棺が運ばれるのを見ながら、2人で画面へ手を合わせましたね。

 彼が右へ行くって言ったら、私は右について行きました。試合はけがが怖くてほとんど見たことがありません。入場の音楽が鳴って、リングに入ってコールまでは見ます。あとは終了のゴングでけががないか確認するだけ。きょうもそうでした。(テーマ曲の)「サンダーストーム」が最後だったことは感動しましたね。『絶対に上がらないから、リングに呼び込まないで』とも言ってました。私が出て行っても誰も喜ばないでしょう。メソメソする引退はイヤだったんで、さわやかに終わって良かったと思います。

 1等賞は私の中では取ったと思います。いま思うと、1度でも2度でも人を感動させられたら1等賞なのかな。そうだとしたら、早くになっていたのかも。夫としては点数はつけられないけど、選手としては100点満点で100点以上の価値があると思います。本当に長い間、お疲れさまでした。

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