「いや(浜口を代えると)思ってたよ」阪神・岡田監督の一手 中野の送りバントで三浦監督に迫った交代か続投かの決断

 「阪神5-2DeNA」(3日、京セラドーム大阪)

 興味深いシーンだった。1点を追う六回、先頭の近本が四球で出塁した。続く中野に岡田監督が指示したのは送りバント。初球をファウルし、2球目をきっちりピッチャー前に転がして走者を二塁へと進めた。

 中野に犠打のサインを送ってから1死二塁となるまで、ベンチの岡田監督の視線は相手ベンチに向いていたように映った。1死二塁となり、森下を打席に迎えた時点で三浦監督がどう動いてくるか-。浜口続投か、それとも右のリリーフを突っ込んでくるのか。岡田監督の読み筋はこうだった。

 「いや、(浜口を代えると)思ってたよ、うん。もう(球数が)90ね、超しとったから、ねえ。でもそのままやったからなあ」

 岡田監督は得点圏に走者を進めれば、三浦監督が浜口を代えて右のリリーフを投入してくると踏んでいた。森下は前の打席で左翼線へ痛烈な二塁打を放っていた。4番・大山もウイニングショットの低めチェンジアップを左前へはじき返し、反撃の1点を奪っていた。さらに中野を打ち取った時点で球数は91球に達していた。

 昨季、3勝の左腕にとって序盤3イニングはパーフェクトながら、2回り目に入って徐々にタイミングが合ってきていた。そして3回り目、先頭の近本に四球を与え、得点圏に走者を背負ってクリーンアップに巡る。阪神の中軸が開幕から不振にあえいでいたとは言え、前の打席でヒットを放っていた森下と大山を迎える。間違いなくこの試合を左右する分岐点。三浦監督ならどうする?相手指揮官にこれだけの状況証拠を与えて考えさせる。それが中野に送りバントを命じた一手の意図にも感じた。

 岡田監督の考えでは、シーズン初登板の先発投手にはある配慮をすべきという考えがある。良い形で終わらせてあげたい-。デイリースポーツ評論家時代、実績のとぼしいシーズン初登板の先発投手が中盤まで快投しながらも、引っ張り過ぎて逆転を許したケースがあった。その際に「今日は実績のない投手に託すゲームちゃうよ。きょうのような投球をすれば次回以降にチャンスがあるやんか」と指摘し、「勝つために最善の手を打ったのか。状況を考慮した上でチームの勝利を優先し、納得できる現状での最善策を採ったのかよな」と語っていた。

 岡田監督の考えなら、仮に浜口がエースであれば、浜口に託す試合であれば、続投という決断に至るだろう。だが昨季3勝の浜口がシーズン初先発で六回1死二塁まで阪神打線を1点に抑えた。ここで交代し、救援した投手が打たれても失点数で浜口に負けはつかない。むしろ次回登板へ好投したイメージが左腕に残り、先発ローテを回していく上で価値あるマウンドになる。

 そしてリリーフ陣がこの場面を抑えれば、大きな自信へ変わる。新外国人のウィックなど未知数の戦力がゼロに抑えれば、ブルペン陣のプラス要素になる。仮に打たれたとしても浜口の自信は次回につながり、打たれたリリーフ投手も課題として反省し、長いシーズンの糧になる。

 岡田監督の「代えると思ったよ」は、最低でも“投手1人の成功を担保する”という考え方にある。「先に投げている投手と後に投げる投手、2人とも殺したらアカン」。評論家時代にこんな格言を何度も教えてもらった。結果、森下は左翼席上段へ逆転2ランを放ち、浜口は直後に降板。敗戦投手となった。1点ビハインドの八回から登板したウィックは近本にソロを浴びるなど2失点し、接戦では使いづらいと判断されてしまう内容だった。

 もちろん逆転2ランを打った森下の力は素晴らしい。一方でDeNAサイドに「打たれる前に代えておけば」という“後悔のダメージ”を与える状況にした岡田監督の一手も興味深かった。仮にDeNAが浜口を降板させてリリーフ勝負に持ち込まれても、前日の試合内容を見れば勝機は見出せる。仮に中野のバントが失敗しても、クリーンアップが打てなくても、個人の反省がメインとなり「もっとこうしておけば」というチームとしての後悔、ダメージは少ない。

 六回1死一塁の時点であらゆる状況を考え、最善を見据えて手を打った岡田監督。投打で状態が上がっていない現状を「ほんと3連敗しないというか、一つ一つ勝てるゲームは一つずつ勝っていけばというようなチーム状況なんで」と言う。度会が加入したDeNAは、初戦を見た限りでは3連敗も危惧するほどの勢いを感じさせた。ただ昨季も13勝12敗と直接対決で勝ち越したように、采配勝負に持ち込めば阪神に分がある。そう感じさせるゲームの分岐点だった。(デイリースポーツ・重松健三)

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