【スポーツ】涙の復帰V…対戦相手から見たバド桃田の今

 自らの不祥事で社会に衝撃を与えた日本バドミントン界のエースが、2020年東京五輪に向けて再出発した。5月27~31日に行われた日本ランキングサーキット大会(さいたま市)で、昨年4月に発覚した違法カジノ店での賭博問題による無期限試合出場停止処分が解除された、男子シングルス元世界ランク2位の桃田賢斗(22)=NTT東日本=が復帰。5連勝し、涙の優勝を果たした。

 処分前最後の試合となった昨年4月のマレーシア・オープンから1年2カ月のブランクを経て“いるべき場所”に戻った元エースは、強烈なスマッシュや代名詞のヘアピンショット(ネットプレー)など、一見ブランクを感じさせないプレーを見せた。では、実際に対戦した選手はどう感じたのだろうか。

 1回戦の相手は、13~14年にNTT東日本で同僚だった日本ランク29位の和田周(26)=ジェイテクト=だった。416日ぶりの実戦となった桃田は緊張感を漂わせつつも、終始主導権を握り、2-0で圧倒した。

 和田「強かった。元チームメートで少しやりづらさはあった。ネットプレーは僕も自信があったけど(桃田の方が上だった)。ブランクはあまり感じなかった。世界レベルの選手だと、関係ないのかな。(処分中に)練習をしっかりしているのを感じた」

 2回戦は昨年のインターハイ2位の小野寺雅之、準々決勝は第1シードを破って勝ち進んできた古賀穂と、早大勢をそれぞれストレートで下した。

 古賀(福島・富岡高では桃田の2学年後輩)「高校時代、(桃田は)面倒見もいいし、よく練習してもらったが、当時よりも強くなっていた。ミスが極端に少ない。最初は決まっていた球も対応されて、どんどん決まらなくなり選択肢がつぶされていく。ショットのコースもいい、角度もいい、速さもいいと、三拍子そろっている。これが世界(レベル)かと実感した」

 準決勝は、元日本代表のチームメートだった武下利一(27)=トナミ運輸=と対戦。長いラリーで53分間の熱戦となったが、2-0でストレート勝ちした。

 武下「立場は違うが、代表復帰を目標にする者同士なので、気持ちで負けないように臨んだ。ラリーだとうまく回されるので、相手が嫌がる所に打ってチャンスボールを待った。元々動きのキレや、柔らかさ、ラケット技術に特長がある選手だったが、(今回は)体が強くなっているイメージがあった。後半にスピードが落ちるかなと思っても全然落ちなくて、全体的に穴がない。すごく練習しているなと感じた」

 決勝は、日本代表で世界ランク53位の上田拓馬(28)=日本ユニシス=と対戦。桃田は何度もダイビングしながら厳しいショットを拾い上げ、長いラリー戦を展開。第1ゲームを先取し、第2ゲームはこの大会初めて落としたが、最終ゲームはシーソーゲームを制して、桃田が1時間27分の大熱戦を制した。

 上田「(桃田は)動きのキレがあったし、前より見た感じも痩せて、スピードも速かった。1ゲーム目は何もさせてもらえなかった。3ゲーム目に入って、より勝ちたいという気持ちが伝わってきた。ラリーが長く続いたり、体力的にもキツくて、今日は(世界最高峰の)スーパーシリーズ以上の試合だった」

 異口同音に飛び出たのは、「以前より動きが速くなった」ということと「処分中に練習してきたことを感じた」という言葉。桃田は1年以上に及ぶ処分期間中、以前は毛嫌いしていたランニングを「毎日30分、気が向けば1時間くらい」敢行し、ウエートトレーニングにも取り組んで、筋力アップを果たしつつも体重は5キロ絞った。

 スピードとスタミナがついたことで、戦術の幅も広がった。得意のネットプレーと正確無比なスマッシュによる攻撃だけでなく、粘り強くラリーを続けながら相手のミスを待つ戦術も取り組んだ。「自分の中で引き出しが増えたのは大きい」と手応えを口にし、「スピードが速くなった分、早くシャトルの下に入れてしまうので、(攻撃に)迷いや中途半端になったところもある。修正したい」と課題も挙げた。

 視察した日本代表の朴柱奉監督は「ブランクがあって余裕がなかったし、得意のネットプレーはまだできていない」と指摘したが、「フィジカル面は落ちていない」と評価した。上松芳則強化本部長は「あとは世界でどこまで戦えるか」と、自費参加での国際大会エントリーを特別に容認した。

 7月には、カナダ・オープン(11日開幕)、全米オープン(18日開幕)に出場する見込み。試合を重ねながら一度抹消されたポイントを1から積み上げ、もう一度世界に返り咲く。(デイリースポーツ・藤川資野)

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