【スポーツ】日本人初9秒台争いが熱い

 日本最速の称号を巡る争いが、がぜん面白みを増してきた。

 21日に行われた東日本実業団選手権(熊谷)の男子100メートルで、ロンドン五輪代表の山県亮太(23)=セイコーホールディングス=が準決勝で大会記録の10秒08(追い風2・0メートル)、決勝でも10秒12(向かい風0・6メートル)をマークし優勝。ジャマイカ人の父を持つケンブリッジ飛鳥(22)=ドーム=も予選で10秒10(追い風0・7メートル)をマークし、2人ともリオデジャネイロ五輪参加標準記録(10秒16)を突破。これで日本人の参加標準記録突破者は高瀬慧(富士通)、桐生祥秀(東洋大)と合わせて4人となり、五輪代表、日本人初の9秒台を巡る争いが、一気に過熱した。

 まず会場をどよめかせたのは、22歳のケンブリッジだった。予選で鋭い飛び出しから、ブレの少ないパワフルな走りで一気に抜け出した。タイムを見届けると、力強くガッツポーズ。これまでの自己ベストを0秒11更新する10秒10に「やっとか-と。正直、うれしかった」と、さわやかな笑顔がはじけた。

 15年4月の織田記念で桐生を破って優勝したが、その後は左ハムストリングのけがに泣かされ記録は伸ばしきれなかった。ただ、今冬はウエートトレーニングに励み、パワフルな走りに磨きが掛かった。「まだ余裕がある。(6月の)日本選手権で9秒台を出して五輪に行きたい。ボルトが引退する前に勝負したいですね」と、野望を口にした。

 そのケンブリッジの快走に燃えたのが山県だった。「かき立てるものがあった」。準決勝では追い風にも乗ってグングン加速。ロンドン五輪以来4年ぶりの10秒0台となる10秒08の表示の後、風速が2・0メートルで公認記録であることを確認すると、グッと拳を握った。決勝では向かい風で10秒12をマーク。今季は強い向かい風条件が続き、この大会までタイムは出せていなかったが、8日のゴールデンGP川崎で桐生を破るなど好調ぶりが際立っていた。

 ロンドン五輪後は腰痛などの故障に苦しんできたが、昨年からプロゴルファーの石川遼も指導した仲田健トレーナーに師事し、肉体改造などに着手。復活を遂げた。「4年前より中身は成長してる。自己ベストも出せる」と、胸を張った。

 これまで9秒台の最有力候補となっていた桐生は、今季出場した3大会5レースすべてで向かい風と条件に恵まれず、足踏み状態が続くが「走りは進化している」と、状態面に不安はない。驚異的な成長で、参加標準まで0秒06に迫るサニブラウン・ハキーム(東京・城西高)もおり、活気づく日本スプリント界。もはや、いつどこで誰が9秒台を出してもおかしくない状態となっている。

 桐生、山県、高瀬、サニブラウンの4人は、09年に女子の福島千里が日本新を連発するなど、日本屈指の高速トラックで行われる布勢スプリント(6月5日・鳥取)にエントリー。ケンブリッジは五輪最終選考会の日本選手権(6月24日開幕・瑞穂)に直行する。果たしてXデーは…。(デイリースポーツ・大上謙吾)

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