早実・清宮が“怪物”たるゆえん

 一気に全国で最も注目を浴びる高校球児になったと言っていい。早実・清宮幸太郎内野手(1年)のことだ。入学式からわずか3日後の4月9日、デビュー戦の春季東京大会3回戦で決勝打を放つと、4回戦でも決勝打を含む3安打をマーク。そして3戦目の準々決勝では、高校初アーチとなる推定130メートルの特大3ランだ。

 父はラグビートップリーグ、ヤマハ発動機の清宮克幸監督。リトルリーグ時代、世界選手権で大会史上最長弾を含む3本塁打、投手で2勝の大活躍で優勝の立役者に。米国メディアに“和製ベーブ・ルース”と大きく取り上げられ、野球ファンや関係者の間では知られた存在ではあった。だが、この10日間で前評判を上回るインパクトを残してみせた。

 何がそんなにすごいのか。まずは親譲りの恵まれた体。身長184センチ、体重97キロ。足のサイズは31センチ。握力は約70キロ。中日・中田スカウト部長は「松井秀喜(元ヤンキース)が高1で出てきた時を思い出した」と言った。ただ大きいだけでなく、しっかりした“幹”の太さを感じられる体の持ち主は、めったにいないとのこと。さらに柔軟性もある。一塁で送球を捕る際は、前後に開いた足がペッタリと地面につく。

 アスリートの英才教育を施された成果もあるだろう。小4まではラグビーや相撲などの他競技も並行してプレー。ラグビーのポジションはセンターだった。野球に絞った理由については「ラグビーも大好き。やりたいのはやまやまだったけど、野球の方が競技人口が多いし、切磋琢磨(せっさたくま)した勝負ができると思った」からだという。幼少期に多くのスポーツを経験し、さまざまな体の動きを覚えたことは、野球にもプラスになっているのは間違いない。

 次に技術。視察した東京大会準々決勝で、初本塁打を目の当たりにした阪神・中尾スカウトは「スイング軌道ができている」と驚いた。高校生はスイングの後半で投手側のわき(左打者なら右わき)が開いてしまい、バットのヘッドが下がってしまうことがほとんど。だが、清宮にはそれがなく、わきを締めたまま最後までバットのヘッドが立った状態で振り切れる。だから、力を逃すことなくボールに伝え、体の軸回転で打つことができている。これは木製バットでも対応できる打ち方。高1で身につけている選手はまずいない。

 さらには、打球の回転を意識している点。プロで活躍するホームランバッターは、ボールの真芯でなく、少し下を捉えて逆回転をかける。そうすることで揚力が生まれ、飛距離が伸びるからだ。清宮は、松井秀喜氏の打撃をお手本にしていると明かした際「バットの返しとかを参考にさせてもらっている」と話していた。

 インパクトの瞬間に左手を押し込み、最後に手を返すのだが、これはまさにスピンをかける動き。どうボールに当てるかを考えるのが普通の高校生。打球の回転を念頭に置く清宮は、考え方の次元が違うレベルにある。

 最後に、物おじしない落ち着いた振る舞い。これまでも取材を受ける機会が多く、場慣れもあるのだろうが、的確な受け答えに感心した。そして、コメントも面白い。

 「スライダー?う~ん、曲がるヤツですね」(初安打の球種を聞かれ)

 「納得はいきません。納得いくのはホームラン。やっぱりダメですね」(2試合目で決勝打を含む3安打もノーアーチに)

 「これからこういう環境でやっていかなきゃいけない人間だと思っているので、大丈夫です」(2試合目の試合後、報道陣の多さについて聞かれ)

 「“上等”というか、それは付き物だと思ってやっていきたい」(初本塁打の試合後、注目される重圧について)

 「まあ、どうですかね。もらえるならうれしいけど、もらっても練習球になっちゃうから…やっぱり飾りますかね」(ホームランボールが欲しいかと聞かれ)

 堂々とした体と面構えもあり、ふてぶてしく映っても不思議はないが、そうならない。しっかり質問者に体を向け、目を見て答える。質問をちゃんと考え、わからない時は「ちょっと、わからないです」とハッキリ言う。だから、少し大きく聞こえるようなことを言っても嫌みがない。こうした受け答えができるのは、両親や指導者の、これまでの教育のたまものだろう。

 体、技術、そしてトーク。実際に取材してみて、すべてが15歳離れしていると強く感じる。名アスリートの愛息で、1年生から名門の主軸。“怪物”の素質は十分だ。だが、高校野球史に名を刻むには、やはり甲子園での実績が必要。今夏から5度あるチャンス。清宮がどんな“伝説”を残すのか、楽しみながら見守りたい。

(デイリースポーツ・藤田昌央)

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