“謎の馬”ソウタツを知っていますか?
2014年11月25日
そもそもなぜ、オーナーは未勝利馬を10年間も出走させないままにしていたのか。JRAでは馬主が正当な理由なく、1年以上馬を所有しなかった場合は資格を取り消される。そのため、ネット等では「馬主資格保持のためではないか」との臆測が飛び交っていたが、関係各所の話を総合するとおおよそその通りだ。
オーナーである中村勝彦氏の所有馬は現在、カキツバタ(牝2歳、美浦・小桧山)1頭のみで、それ以外は全て引退済み。中村氏自身はカキツバタがいる時点で条件は満たすのだが、ソウタツは複数の馬主による共同所有馬だった。馬主仲間が抱える資格問題が何らかの形で解決したため、不出走のまま引き延ばしていた“謎の馬”をようやく、引退させてもいい状況になったようだ。
ただ、前述したように、抹消手続きに踏み切ったきっかけは種付けの発覚だ。それはタイミング的に間違いない。資料が表に出なければ、馬の死後も登録されたままになっていた可能性もあったわけだ。それはそれで、ミステリー度は倍増しただろうが…。
JRAは今回の件について「競走馬登録中、繁殖の用に供することは禁じられています。改めて調教師には預託管理の徹底をお願いしたい」と返答。ルール違反を認識しつつも、特に罰則などを科す考えはないという。
確かに、馬券を買うファンが直接迷惑を被る、といった類いのものではなく、私も10年不出走の14歳未勝利馬というレアなキャラを面白がっていただけだ。何事もキッチリカッチリなJRAにしては案外、馬の管理はテキトーなんだな、とは思ったが…。中村勝彦氏は中山競馬場の復興に尽力した二代目・中村勝五郎氏の孫。名士に一定の配慮が働いたのかもしれない。
現在、ソウタツは北海道日高の新冠町にある牧場で繋養されている。今春の種付けはいずれも不受胎に終わったそうだが、繁殖牝馬としての仕事を続けていれば、いつかソウタツの子がデビューするときが来るだろう。若駒の母の名を見て「あのソウタツの子か!」と驚かせてくれる日を楽しみに待ちたい。
(デイリースポーツ・長崎弘典)