なぜ外国人力士ばかりが出世するのか?

 名古屋場所開催中の相撲界。その番付表を見ると、改めて驚かされる。横綱、大関、三役を含めた東西の幕内合計42人中、外国人力士は実に16人。内訳はモンゴル11、ブルガリア、ブラジル、グルジア、エジプト、中国各1人。中でもモンゴルは白鵬、日馬富士、鶴竜の3横綱を筆頭に照ノ富士、玉鷲、旭秀鵬、鏡桜らがひしめき、最大勢力を誇る。

 もちろん、日本人力士が頑張っていないわけではない。大関稀勢の里、琴奨菊、関脇豪栄道、栃煌山。そしてホープ遠藤、勢、千代鳳、佐田の海と魅力たっぷりの力士が土俵を盛り上げている。

 だが、仮に「1部屋に外国人力士の所属は1人」という日本相撲協会の決め事がなく、各部屋外国人力士の所属は無制限となったら、日本人力士がどれだけ幕内に残れるのか。現状ではポジティブな考えは持ちにくい。

 では、なぜ、これほどまでに外国人力士、特にモンゴル人力士が強くなるのか。

 デイリースポーツ評論家の武蔵川親方(元横綱武蔵丸)はこう話す。同親方自身はハワイ出身で横綱曙、貴乃花と相撲界の隆盛時代を築いた功労者。

 「やっぱりハングリーさだよね。自分がハワイから来たときもハングリーだった。絶対に強くなってやるって思っていたな。モンゴル人力士にはまだそれがあるけど、日本人は恵まれているから、そこまでの気持ちはないんじゃないかな」

 ハングリーとは辞書によると「ひもじい」「空腹な」「飢えた」…。何かを渇望している状態で、一般的にだが、来日したばかりのモンゴルや欧米の先進地域以外の国の出身力士が置かれた立場を象徴する言葉といっていいだろう。対する日本人力士は物理的な飢えはもちろんないし、それほど不自由のない環境に生まれ育ってきた者が大半だ。

 日本相撲協会役員待遇の陸奥親方(元大関霧島)もこう話す。

 「日本人は何不自由ない状況で育ってきたから、何が何でも強くなって、お金を稼いで、両親に楽をさせてあげようなんて思うのは、はっきり言って難しいでしょう。そこへいくと、モンゴル人力士はホント頑張る。当然、稽古はまじめにやるし、どうやったら上にいけるか研究することにも熱心ですよ」

 最後にデイリースポーツ評論家で日本相撲協会理事の友綱親方(元関脇魁輝)。

 「ハングリーさが一番の理由だね。うちの魁聖はそうでもなかったが、幕内歳年長の旭天鵬はもちろん、モンゴル人はみんなハングリーだったと思うよ。力士は食べることも強くなるために必要なんだけど、旭天鵬や旭秀鵬は納豆を大きなお椀に何パックも入れて毎日かき込んでいたそうだよ。納豆の持つタンパク質で体を大きくしようとしたんだね。このハングリーなところを日本人の弟子に教えようとしても無理。育ってきた環境が違いすぎるから」

 ハングリーといえば、昔は日本人の代名詞だった。戦後の貧しさからはい上がり、先進国に追いつけ追い越せ。それが成し遂げられた今、国技の根幹が揺らぎかねない状況を生み出した。あの最強横綱大鵬に勇気をもらった世代の頑張りが日本を豊かにし、大鵬の後進に当たる日本人力士たちのハングリーな気持ち、はい上がろうとする意欲を奪っているとしたら、ちょっと皮肉な話だ。

 こうしてみると、ハングリーさからくる稽古熱心、研究熱心さは、現代の日本人力士には合わない概念ともいえる。日本人横綱誕生を願うなら、この際、日本相撲界は割り切って、日本人力士たちの新しいモチベーションの高め方を模索することも必要だと思うが、どうだろうか。

(デイリースポーツ・松本一之)

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