統一球、昨年までの規則なら違反外!?

 昨年に続き、プロ野球ではまたしても「統一球」が注目を集めている。日本野球機構(NPB)が、第三者機関に委託して開幕2戦目に1軍公式戦で使用された統一球の反発係数を検査したところ、その平均値が規則で定められた値を超えるものだった。いわゆる“違反球”が、試合に使われていたのだ。

 一体、どれだけの影響があるのか。昨年の同時期に計測された反発係数の平均値は0・416で、今年は0・426。ピンと来ない人も多いだろうが、0・001で約20センチの変化があるとされていることから、今年は打球の飛距離が昨年よりも約2メートルの違いがあると推測される。昨季までならフェンス直撃の打球が、本塁打になった打球もあるだろう。

 ただ、昨年までの規定なら“違反球”ではなかった。今年、NPBは規定をより厳格化しようと、ボールを製造する際に出る公差(誤差)の許容を廃止。規定の上限値を0・4374から、0・4234に変更していた。今年の数値を見ても極端に飛びすぎている訳ではなく、違反でなければ、騒動にはなっていなかっただろう。

 ちなみに過去には、もっと“飛ぶボール”が使用されていた時期もある。統一球の導入以前である09年には、ある球場で0・434、別の球場で0・433のボールが使用されていた。この09年の個人成績を見ると、パ・リーグでは西武・中村が48本塁打を放ち、タイトルを獲得。一方で15勝で防御率1点台だった日本ハム・ダルビッシュ(現レンジャーズ)や16勝の西武・涌井(現ロッテ)など、好成績を収めた投手も数多くいた。

 製造メーカーのミズノは15日に会見。“違反球”が製造された要因として、材料であるウールを挙げた。乾燥して巻きすぎたことで、通常より硬くなったことが想定されるとの見方を示した。

 「ボールは生もの」と言われるだけに、こうした事態は今後も起こりうる可能性がある。グラウンド外での騒動を繰り返さないために、NPBは品質管理のさらなる徹底を誓うが、規定緩和や大リーグ(MLB)のように反発係数の基準値を設けないことを検討する必要もあるだろう。

 ここ最近、毎年のように、熱戦に水を差している統一球問題。巨人の阿部は「ボールがどうだこうだ、飛ぶ、飛ばないと言っている時点であまりいいことじゃない。どの世界でも同じ野球をやっている訳で、日本だけこういう物議を醸すことがすごく恥ずかしいと、個人的には思います」と話したことがある。努力を重ねて本塁打を打っても、「飛ぶボールだから」と思われるのは選手も納得がいかないだろう。阿部の言葉からは、一流としてのプライドが感じられる。

 純粋に、一流選手が魅せるハイレベルのプレーに注目が集まるのはいつになるのか。ファン、そして選手たち自身も、その時を待ち望んでいる。

(デイリースポーツ・佐藤 啓)

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