ベイカー茉秋 男子90キロ級日本初の金メダル獲得「歴史に名を刻めた」

 「リオ五輪・柔道・男子90キロ級・決勝」(10日、カリオカアリーナ)

 男子90キロ級でベイカー茉秋(21)=東海大=が決勝でリパルテリアニ(ジョージア)に優勢勝ちし、金メダルを獲得した。旧86キロ級を含め、この階級の日本勢の五輪制覇は初めて。日本柔道男子のメダル獲得総数は50個に到達した。女子70キロ級で前回ロンドン五輪7位の田知本遥(ALSOK)も今大会の日本の柔道女子で最初の金メダルを獲得。日本の男女が同じ日に五輪で優勝するのは04年アテネ五輪の男子100キロ超級の鈴木桂治、女子78キロ超級の塚田真希以来となった。

 勝利の瞬間、自分が一番だというように、両手の人さし指を高々と天に突き立てた。男子90キロ級で日本に初の金メダルをもたらしたベイカーは、決勝で有効一つのリードを守り切った。自身に出される「指導」は計算ずく。時間を稼いで逃げ切った。求めてきたのは日本流の正しい柔道ではない。勝ちに徹する美学だった。

 「(最後は)格好良く一本で決めたかった」と言いながら、「歴史に名を刻めた」と胸を張った。決勝でベイカーに敗れて表彰台で泣き崩れたリパルテリアニとのコントラストは鮮明。ベイカーは「銀と金じゃ違う」ときっぱり言った。井上康生監督(38)はこの戦い方を否定はせず「下がったのは今後の課題だが、彼には執念がある。練習でも、背中を畳につけることを悪としているほどだ」と、その執念もたたえた。

 初戦から動きがさえ渡った。強靱(きょうじん)なフィジカルに柔軟性を兼ね備えており、連続した足技や、投げ技から寝技へ素早い連係も見せ、粘り強く安定感ある試合運びで頂点をつかんだ。

 柔道との出会いは小学1年のとき。習っていたピアノの先生が、姿勢を直すために勧めたことがきっかけだった。それでも結局、今の立ち姿は腰を引いて重心を低くする変則的なスタイルだ。

 井上監督が直接乱取りした際にも「独特のやりにくさ、気持ち悪さがあった」という。「日本にとって新種。どちらかというと否定されていたスタイル。新たな柔道の面白さを切り開いた」と称賛した。

 米国人の父親を持つハーフ。両親は幼いころに離婚し、母親と暮らした。「母子家庭で女手一つで育ててくれたので、勝って恩返しをするのが、オリンピックという最高の舞台でできたのがうれしいです」と、この日スタンドで観戦した母・由果さんに感謝した。

 母は「小さなころからの夢をかなえられて、それを家族に見せてくれてすごくうれしい」と息子の晴れ姿を目に焼け付けた。

 2日前に73キロ級の大野将平(旭化成)が優勝した場面を会場で見て「かっこいいな。自分もこうなりたい」と挑んだ夢が現実になった直後、若者は記者会見で早速、「連覇を狙う」と宣言した。ベイカーの「伝説」はこれからだ。

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