湯元進一が銅!日本初の双子メダリスト
「ロンドン五輪・レスリング男子フリースタイル55キロ級」(10日、エクセル)
日本初の双子メダリストが誕生した。レスリング男子フリースタイル55キロ級の湯元進一(27)=自衛隊=が、3位決定戦を制して初出場で銅メダルを獲得。双子の兄で同60キロ級の健一(ALSOK)が北京五輪で獲得した銅メダルと並んだ。双子選手では、男子マラソンの宗茂、猛兄弟が1984年ロサンゼルス五輪、ノルディックスキー複合の荻原健司、次晴兄弟が98年長野五輪にそれぞれ出場したが、双子の五輪メダリストは日本の全競技を通じて湯元兄弟が初の快挙となった。
宗兄弟も、荻原兄弟も果たせなかった日本史上初の双子メダリスト。だが、試合直後の進一は納得のいかない表情だった。「兄に並んだだけ。俺が金メダルを取る組み合わせだったのに。『(兄を)抜けんかった』という悔しさがある」。それでも表彰式で日本男子レスリング史上、通算50個目となる節目のメダルを掛けられると「重いメダル。取ったんやなぁ」と少し笑った。
出場できなかった北京五輪では、表彰台に立つ兄の姿を悔しい思いで見ていた。「健一を追い越す」‐。その一念でロンドンに初出場し、準決勝進出。第2ピリオド(P)でキンチェガシャビリ(グルジア)の右足を破壊して圧勝し、優位に立ちながら第3Pで攻めきれずに惜敗。兄を抜くことはできなかった。
準決勝後、小学3年から和歌山の自宅でレスリングを仕込まれた熱血漢の父・鉄矢さん(47)に「あかん!」と怒鳴られ、目が覚めた。3位決定戦の第1Pは1‐1も、相手が警告を受けて進一が制した。第2Pも先制されながら、残り16秒で相手をタックルから場外に押し出して同点。後からポイントを取った方が勝者扱いとなるため、兄に並ぶという最低限の仕事をやり遂げた。
「2回戦から体が動かなくなった。世界選手権とは違い、五輪になると相手の思いが伝わって疲れる。ほんま、しんどかったです」。五輪の重さが身に染みた。
進退について、進一は「親父は『もうええやろ』と言うでしょうが、決めるのは自分なんで。このメダルを磨いて『金』にしたいという思いもある」と現役続行に意欲。「親父にもメダルを渡したい」。出稼ぎの肉体労働で支えてくれた父。「優しくてレスリングの話をしない」という母・サツエさん(63)も心の救いになった。11日には兄・健一が登場。「このメダルが後押しになれば」と、同一大会Wメダル獲得という、さらなる快挙を願った。
