イチローが魅せた、新監督への心遣い

試合前、イチロー(51)から首にネクタイを掛けられたマーリンズのジェニングズ新監督=マイアミ(共同)
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 「マーリンズ2-3ダイヤモンドバックス」(18日、マイアミ)

 マーリンズのイチロー外野手(41)が「8番・中堅」で出場し、4打数2安打1四球。打率を・287とした。12戦ぶり(代打7試合を含む)、今季6度目のマルチ安打でメジャー通算安打数を2873本とし、歴代42位のベーブ・ルースの記録に並んだ。

 前日の試合後に成績不振を理由にレドモンド監督が電撃解任された。新監督に就任したのはゼネラルマネジャー(GM)のジェニングス氏だ。前代未聞の人事。前日までなかった異質な空気を一掃したのはイチローだった。

 試合開始直前のベンチ。イチローは新監督の元に歩み寄ると、自宅から持参したチームのロゴ入りネクタイを首に掛け、言葉を贈ったのだ。

 「フロントから現場サイドに、っていう、その違和感はきっと誰もが覚えるだろうからやりづらさはある、本人にもね。特に選手たちはフロントの人間が現場にいるっていうイメージは絶対に好きではないからね。普段言ってることが言えなくなることがストレスになる。だから、(新監督が)現場側の人間だっていうことをはっきりさせるためにもあのネクタイは必要だった。これを取ったらGMじゃないからね、と」

 ユニホーム姿でネクタイを掛けられた指揮官は爆笑しながらイチローとハイタッチ。その様子を見ていた仲間たち、そして、試合を中継していた放送席も大笑いした。

 「わかりやすく、ちょっと笑いに変える。ジョークにしておかないと、特に(周りで)見てる人は違和感を覚えるだろうからね。フロントだったらスーツとネクタイのイメージ。それ(ネクタイ)を取った後は監督をやる、という境界線ができやすい。そんなイメージでした」。

 ジェニングス監督はスカウトからフロント入り。メジャーどころか、マイナーでもコーチや監督の経験がないことが大きな話題になっている。しかし、イチローは「野球をよく知っている人で、徳が高い人だったらいいと思いますけどね。おかしな経験者よりも、発想としては面白いと思います」と理解を示した。

 だからこそ、初陣を勝利で祝ってあげたかった。その気持ちをバットで表現するかのように三回に左前打を放つと、続く五回の打席では左翼線内側ぎりぎりに落とす技あり打。5日以来となる1試合2安打でメジャー2873安打とし、ルースの持つ記録に並んでみせた。

 試合は、四回に2点を先制されながら七回に同点に追いつき、延長戦に突入。1点を追う延長十三回の打席で四球で出塁したイチローは次打者の時に二盗を試み、いったんは「セーフ」と判定されたが、敵軍のチャレンジによるビデオ判定の結果「アウト」に変更。試合後の取材で開口一番、「どのタイミングでアウトでした?」と逆質問するほど、際どく、そして、悔しいプレーだった。

 新しいベンチコーチには、マリナーズ時代のコーチでもあったゴフが就任。2人に初勝利をプレゼントできなかったが、試合前に見せたイチローの心遣いがチーム内の空気を和ませたことは間違いない。

 今回のアイデアはこの日、起床した時に思いついたというイチロー。「でも、オレンジがなかったんだよね、僕の手持ちのネクタイで」。小道具の色にもこだわるところが、いかにもイチローらしかった。

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