さくらと源公が明かす渥美清さん秘話

 8月4日は俳優・渥美清さん(享年68)の命日である。突然の訃報が届いた1996年から今年で20年目の夏を迎えた。ここでは国民的映画「男はつらいよ」シリーズで共演した妹と弟分が語るエピソードを紹介したい。

 「男は-」シリーズで妹・さくらを演じた倍賞千恵子(74)は、6、7月に大阪と東京で開催された「寅さんクラシックコンサート」の発表会見で、渥美さんの人柄がしのばれる話を披露した。本人がシリーズ終了後の“第2の人生設計”を描いていたというのだ。

 倍賞によると、渥美さんは「もしよ、『男はつらいよ』を撮らなくなっても、まだ食っていける方法があるんだよ」と話しかけてきたという。その“方法”とは「お前(倍賞)が歌って、俺が司会やってさ、(佐藤)蛾次郎はキップ切りよ。それで3人、地方のキャバレー回るんだよ」というもの。倍賞は「まだ渥美ちゃんが元気だった時に、そんな話をしたことがありましたね」と懐かしんだ。

 この話を伝え聞いた佐藤蛾次郎(70)は「そうですか…。それは初耳やけど、天下の渥美清に俺の名前を出していただいてうれしい。役者冥利(みょうり)に尽きますよ」と感無量の表情。「男は-」シリーズで寺男・源公として接してきた佐藤は「私生活でも弟分として見てくれた」という関係ならではの素顔を語ってくれた。

 「撮影の合間、休憩している渥美さんに向かって『田所康男さん、おはよう』って本名で声を掛けると、うれしそうな顔をされてね。千恵子さんが『田所さ~ん!』って呼ぶと、アニキは『は~い』って応えてたね」

 また、佐藤が盟友・松田優作さんと渋谷のライブハウスで共演した時のこと。サファリルックの渥美さんが花束を手にステージに上がり、「ガジロー、頑張れよ!こんな男ですけど、みなさんよろしくお願いします」と客席に声をかけた。佐藤は「仲間の舞台を見に行っても黙って帰られる人だったので周囲から『そんなことをするわけがない』と言われたけど、それは事実やし写真もある。それだけかわいがってくださった」と懐かしむ。

 渥美さんの死が報じられたのは、遺志によって3日後の8月7日午後。佐藤は「自宅にいるとテレビ局のプロデューサーから電話がかかってきた。『渥美清さんが亡くなられ、通夜も葬儀も終えた』と聞いた時は、『ウソやろ!?』と思ったのが最初。夕方のニュース番組に生出演してから局のロビーで囲み取材を受けている間までは実感がなく、1人になってボロッと涙が出た。1年以上『男は-』の音楽を聴くと涙が止まらなかった」と語る。倍賞は「しばらく信じられなくて、(作品は本人が)動いているから見るのがいやだった」と振り返る。

 同年8月13日に松竹・大船撮影所で「お別れの会」が催され、約3万人ものファンの列は大船駅まで続いたという。佐藤は「立派で盛大な会だったんですけど、僕の隣にいた松村達雄さんがポツリと漏らした言葉が忘れられない」という。

 「男は~」で“2代目おいちゃん”を演じた名優が漏らした言葉とは…「ガジちゃん。アツミちゃん、こういうのイヤがるね」。渥美さんの人となりを的確に表す言葉だ。その松村さんも2005年に亡くなっている。

 さくらも源公も、渥美さんの享年を越えて年上になっていた。「今の方が冷静に見られる」(倍賞)、「偉大な人。あんな役者はもう出てこない」(佐藤)。渥美さんは今も2人の中で生きている。7月から始まった娯楽映画研究家・佐藤利明氏によるデイリースポーツ連載「天才俳優渥美清 泣いてたまるか人生」も8月に入って佳境に入ってきた。(デイリースポーツ・北村泰介)

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