ホークスが斉藤と契約し続けた理由とは

 現役復帰を断念したソフトバンク・ホークスの斉藤和巳リハビリ担当コーチについて、チームの同僚で同い年(36歳)の江尻慎太郎投手がこれまでの交友を振り返り、改めて斉藤和巳という投手の凄さを自身のブログで語っている。

 江尻はまず2006年パ・リーグのクライマックス・シリーズでのあのシーンが忘れられない。当時、江尻が所属していた日本ハムは、0-0で迎えた最終戦九回裏2死、稲葉の内野安打でサヨナラ勝ちし、パ・リーグを制した。その時、ホークスのマウンドにいたのが斉藤だった。

 「サヨナラ勝ちの歓喜の輪の中に飛び込もうとグランドに駆け出した僕の目に何より焼き付いたのは ソフトバンクホークスのエース斉藤和巳がマウンドに泣き崩れる姿だった その姿を見て、正直、ぞっとした…『世の中に、たった一試合に、こんなに思いをぶつけられる投手が存在するんだ…』という事実に…ぞっとした そんな輩には、僕は到底勝ち目はない」

 その4年間で64勝16敗という圧倒的な成績を収めてきた男の存在感が、負けて泣き伏して初めて江尻の胸に迫ってきた。

 しかし斉藤は翌2007年に6勝を挙げたのを最後に、グラウンドから遠ざかった。右肩を痛めたのだ。

 それから5年が経って、江尻はホークスにトレードされた。運命は経巡り、斉藤のチームメートになったのだ。そしてキャンプ。江尻はまた斉藤に驚かされた。

 「驚愕のパワーと瞬発力。なんというか…あんなにでかくて、あんなにスピードとパワーを兼ね備えたやつ見た事ない」

 身体能力だけではない。「一つ一つのメニューを誰よりも丁寧にこなす。試合に出ないから…と言ってしまえばそれまでだが…与えられたメニューをしっかりこなす、本当にしっかり。なかなか出来る事ではないんだ」と、野球人としてのその姿勢にも感じ入った。

 その時点でホークスは5年間、一度もマウンドに立つことのない斉藤と、リハビリ・コーチの肩書を付けた上で契約を更新し続けていた。江尻はやはりその年、アメリカから戻ってホークスと契約した新入団の五十嵐と、球団が斉藤について「そんなに長く復帰をまつ」理由が分かったと話し合った。

 やがて斉藤とは一緒に食事する仲になった。先日、焼き鳥を食べに行った際、江尻はついこんなことを言った。「今ファームでこんなに調子がいいし、結果も出ている。でも、もし次一軍に呼ばれた時…一軍で抑える事ができなかったらどうしようと、なんというか…怖いんだ…。こんなに状態がよく、それでも上で結果が出なかったら、それの意味する事は…」。

 すると斉藤は「うらやましいよ!その感覚!懐かしいもんなぁ~。失敗が怖いなんて…」と遠くを見る目で言った。投げることができて初めて失敗もする。

 そして江尻は気付かされた。ブログを次の言葉で締めくくっている。

 「これからも何度も失敗が怖くなるたびに、この事を、和巳の事を思い出すだろう これから何度も助けられていくだろう そんな財産をわけてくれた、和巳のために、まだまだ頑張りたいと思う ありがとう!斉藤和巳!おつかれさま!」

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