【競輪】稲垣裕之が男泣きの優勝も…総売上は4日制G1で史上最低

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 記者は10月7~11日の「G1・第25回寛仁親王牌」取材のため前橋競輪場(群馬県前橋市)へ。車券は初日1Rでヒットしただけで、あとはスカばっかり。「惜しい」車券はあったものの、ハズれたら惜しいも何もない。スカはスカ。財布の中身もスッカラカンで、懐が暖まることはまったくなかった。

 決勝戦は稲垣裕之(39)=京都・86期・SS=が1着。前を任せた脇本雄太(福井)が赤板(残り2周)前から先行し、稲垣は最終3角から番手まくりを敢行。後ろの村上義弘(京都)がアシストしてくれたことも手伝って、鋭く伸びてきた平原康多(埼玉)よりわずかの差で先着。2001年8月にデビューした稲垣は、15年2カ月でようやくG1ウイナーの称号を得た。

 記者はA級でくすぶっていたときから稲垣を見てきただけに、G1制覇は自分のことのようにうれしい。平原が猛然と伸びてきたときは「また2着かいな」と思ったが、何とかこらえて先頭でゴール。本人も直後は1着かどうか分からなかったようで、すぐにガッツポーズが出なかったが、半周後に「ファンの方が教えてくれました」とのこと。少し遅くなったが、手を高く挙げることができたようだ。

 検車場に引き揚げてうれし涙を流した稲垣。表彰式でも泣いていた。そういえば、8月の松戸オールスターでも、稲垣は決勝戦後に泣いた。村上義弘が先行して、稲垣は番手まくりを敢行。ここまでは良かったが、最後は稲垣後位を回った岩津裕介(岡山)に優勝をさらわれて、稲垣は2着。後片付けをしながら報道陣からの質問に応えていたが、それが終わると人目をはばからず涙を流した。「勝っても負けても泣くんじゃない?」。某紙の記者は稲垣がG1の決勝戦を走る前にこう言っていたが、実際にもそうだった。

 稲垣のうれし涙で幕を閉じた今回の「寛仁親王牌」だが、売り上げは4日制G1で史上最低の83億6470万5400円。目標の94億円を大幅に下回っただけでなく、今までの4日制G1で過去最低だった今年6月の名古屋「第67回高松宮記念杯」の92億537万5700円をも大きく下回った。前年(弥彦)から比較しても90・8%とかなりの低調だった。

 売り上げ低調の要因は何だったのか。年金支給月だが、支給日前だった…などは言い訳に過ぎない。もちろん給料前(給料日は25日のところが多いから、ボートはSGをその月の25日以降に設定することが多い)というのも違う。今回は初日だけ平日で、2日目からは土日祝。開催日程は悪くない。問題は番組編成にあると思う。

 寛仁親王牌は全プロトラック競技のケイリン決勝出場者、各競技1~3位が多数を占めるため、どうしても若手の自力型が多くなる。番組編成が難しいのは分かるが、特に準決は「買いにくいなあ」と思ってしまった。予想を読者に披露する記者がそう思うのだから、ファンも当然ながら「買いにくいなあ」と思ったに違いない。3日目(9日)の準決10R、平原康多は新山響平(青森)の番手を回ると想定して番組を編成したのだろうが、平原が他地区の自力型に前を任せるはずがなく、2人はともに単騎で戦うことに。いびつなライン構成になったため「買いにくい」レースなってしまった。ライトな競輪ファンからすれば「ミッドナイト競輪(7車立)のガールズやチャレンジのほうが買いやすい」と感じてしまうだろう。

 9月の「G2・共同通信社杯」(富山)も若手の自力型が多かったが1、2次予選は自動番組。いっそのこと、準決も自動番組にすれば…と思ったが、寛仁親王牌も1、2次予選だけでなく、準決まで自動番組にすればいい。人の手で編成して「買いにくい」よりマシだし、思いのほか「買ってみたい」番組になるかもしれない。カジノでいえば、番組編成担当者はディーラー。いずれにせよ、その手腕を存分に発揮しなければ、G1の売り上げは下がる一方かもしれない。(関西競輪担当・森田新吾)

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