【ニエル賞】キズナ衝撃世界デビュー
「ニエル賞・仏G2」(15日、ロンシャン)
今年の日本ダービー馬が華々しい世界デビューを飾った。凱旋門賞・仏G1(10月6日・ロンシャン)と同じ舞台で争われた3歳馬による前哨戦へ出走したキズナ(牡、栗東・佐々木)は、武豊に導かれ後方から直線一気に末脚を伸ばしてV。英国ダービー馬・ルーラーオブザワールドの強襲をしのぎ切った。日本馬の欧州重賞制覇は昨年のフォワ賞(オルフェーヴル)以来8勝目。遠征2戦目、あらゆる部分で慣れと良化が見込める本番でも期待できそうだ。
日本競馬の悲願でもある凱旋門賞制覇が、ついに現実のものとなるのではないか‐。そう思わせる勝ちっぷりだった。日本のダービー馬キズナがロンシャンでも自慢の末脚を発揮した。後方2番手で折り合うと、外へ持ち出した直線では武豊が追い出しを我慢する余裕も。人気の仏国馬フリントシャーをかわして先頭に立つと、最後は内から強襲した英国ダービー馬・ルーラーオブザワールドとの首の上げ下げの大接戦をしのぎ切った。
「キズナのスタイルを崩さないように気をつけて乗りました。初めての場所でも上手に走っていたし、思いのほか反応も良く、いいレースをしてくれました」と武豊。関係者からの祝福攻めに満面の笑みを見せた名手は「きょう(の結果)でロンシャンへの適性の答えが出ましたね。本番がさらに楽しみになりました」と大きくうなずいた。
今回は必ずしも勝利を求められていたわけではない。初物尽くしのなか、活力を温存し、全ては凱旋門賞のために‐。そんな状況下で最高の結果を出せた事実は大きい。
日本ダービー馬が3歳時に凱旋門賞へ挑戦するのは初めてになる。59・5キロを背負う古馬に対し、56キロで臨める有利さがある(過去10年で3歳馬は8勝)だけに、前哨戦を勝利したことは大きな自信となる。
東日本大震災からの復興を目指す、日本社会の連帯を示す象徴的な言葉「絆」が馬名の由来だ。復興への祈りとともにさまざまな思いを託され、名付けられた今年のダービー馬。06年の凱旋門賞で、武豊を背に父ディープインパクトが無念の失格(3位入線)となってから7年。日本競馬界の夢を追って、陣営は青鹿毛の馬体を究極の状態に研ぎ澄ましていく。
