健さん逝く…貫いた「不器用」俳優道

 日本を代表する俳優で、「昭和残侠伝」シリーズなどの任侠映画や、「幸福の黄色いハンカチ」「南極物語」など205本の映画に出演した高倉健(たかくら・けん、本名小田剛一=おだ・ごういち)さんが10日、午前3時49分、悪性リンパ腫のため都内の病院で亡くなっていたことが、18日、分かった。83歳。葬儀は近親者で行った。寡黙で実直な、日本男児の憧れを演じ続けた高倉さん。生涯現役を貫いたが、盟友・降旗康男監督(80)との新作映画は幻となった。

 日本中が憧れた男の中の男が静かに世を去った。所属事務所によると、高倉さんは次回作の準備中に体調不良で入院。治療を続けていたが、容体が急変し、10日に帰らぬ人となった。所属事務所によれば、最期は「生ききった安らかな笑顔」だったという。

 プライベートは表に出さなかった高倉さんらしく、入院したことを知っていた関係者もほとんどいなかった。最近まで体調も問題なかったようで、今年8月にはCM撮影にも参加。来年の春には映画の撮影に入る予定だった。

 新作は、遺作「あなたへ」(12年)も手がけた降旗監督作品で、親子の姿を描いたオリジナルストーリー。降旗監督は「残念の一言です。撮影を楽しみにしていましたが、できなくなってしまいました」と悔やんだ。

 高倉さんは明治大学を卒業後、55年に東映ニューフェイスとして入社。63年の「人生劇場 飛車角」をきっかけに任侠映画を中心に活躍。「昭和残侠伝」や「網走番外地」などのシリーズはいずれも大ヒットした。「死んでもらいます」の決めぜりふに多くの男性ファンが魅了された。

 その後、「八甲田山」や「幸福の黄色いハンカチ」で、それまでの「アウトロー」というイメージから、誰からも信頼され、愛される男を演じ、一気にファン層も広がった。

 「鉄道員」などでも見せた一貫して寡黙に苦難に耐える男は、あらゆる世代にファンを増やしていった。CMでの「不器用ですから」というせりふは、健さんのイメージを決定づけるフレーズとなった。

 ただ、素顔は寡黙とは対照的なおしゃべり好きでもあった。「あなたへ」の長崎ロケでは、気軽に駄じゃれを交えて話しかけてくる高倉さんに、地元の住民が驚くほどだった。スタッフにも分け隔てなく話しかけ、全員にダウンベストをプレゼントするなど徹底した気遣いも見せた。スターのおごりはみじんもなく、ひたすら映画を愛し、映画を愛する仲間を愛した昭和最後の大スターだった。

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