坂東巳之助、亡き父の背中を追い続ける

 21日に膵臓(すいぞう)がんのため59歳で亡くなった歌舞伎俳優・坂東三津五郎さんの長男で歌舞伎俳優・坂東巳之助(25)が23日、東京・歌舞伎座で、公演後、取材に応じ、亡き父への思いを語った。

 悲しみを押し殺すように、力強い口調で「父の残してくれたものを守っていきたい」と語り、大和屋(屋号)の、そして日本舞踊坂東流の芸を継承することを誓った。 

 巳之助は、伝統芸能の継承者として父の背中を追い続けることを宣言した。入院中だった今年2月7、8日に一時外出してまで、坂東流の名取試験に立ち会った三津五郎さんの姿に感銘を受けたことを明かした巳之助。「その姿が最後に父が見せたかったものだと思いました」と壮絶な芸への思いを感じ取った。父が亡くなった21日以降も歌舞伎座の舞台に立ち続けたことが、その証しでもあった。

 高校時代には父に反抗し、歌舞伎から距離を置いたこともあったが、舞台への思いは断ちがたく、復帰。その時に父から「本当にそれでいいのか」と優しく声をかけられたことが今も心の支えとなっている。「その一言で(歌舞伎は)自分で選んだ道、と思えるんです」と感謝した。

 その後は数え切れないほどの教えを受けてきたが、昨年12月に、舞踊「独楽売(こまうり)」の手ほどきを受けたのが最後となった。「もっとたくさんのことを教えてほしかった」と思いは尽きない。「自分が楽しまなければ、お客さまも楽しめない」という三津五郎さんの言葉をかみ締め、「楽しいという気持ちは大切にしたい」と笑顔を見せた。

 臨終は巳之助、2人の姉、2人の叔母でみとったが、亡くなる直前には巳之助の母で三津五郎さんの元妻の女優・寿ひずる(60)も病室を訪れていたことも明かした。

 寿のいる場で次女が父に結婚を報告。温かい空気に包まれ、“家族写真”を撮ったという。姉がギリギリで父に喜びを伝えただけに、「孫の顔くらいは見せてあげたかった」と心残りも口にした。

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