【8】ギャラリーとの距離が近いシニア
「室田淳の鉄人トーク・第8回」
最近の男子ツアーはなかなか試合数が増えなくて厳しい状況にあるけど、シニアツアーの方は増加傾向にあり、観戦に来ていただいたギャラリーの方にも楽しんでもらえているんじゃないかな。
シニアツアーの良いところは、とにかく選手とギャラリーが近いことだね。選手もみんな笑顔でプレーしているから、ギャラリーの皆さんも「頑張れ」って声をかけやすいんだと思う。ラウンド中に会話を交わすことだってあるしね。
それに昔、レギュラーツアーで何勝もした選手が多く出ているから、懐かしく感じてくれていることもあるだろうね。選手の方もギャラリーを楽しませようと思いながらプレーしているので、とてもいい雰囲気なんだ。
ところが、レギュラーツアーとなると、そうはいかない。自分のゴルフを磨き、とにかく一つでも上の順位、1円でも多く賞金を稼ぐことに必死になっているから、ギャラリーのことまでなかなか考える余裕がない。自分もそうだったからよく分かるけど、とにかくピリピリしていた。
でも、シニア入りして余裕が出てきたことで、周りも見えるようになってきた。我々はギャラリーの皆さんがあってこそのプロゴルファー。アマチュアの方がマネできないようなショットや、時には恥ずかしいミスショットもお見せして、いっぱい楽しんでもらって家路に就いてもらう。これもプロゴルファーの大切な仕事なんだ。
確かにジュニアを育てるのも大事だけど、長くゴルフをやってきたアマチュアの人たち、特に自分と同世代のシニアの方を大切にして、これからも末永くゴルフを愛していただかないと、どんどんこの世界は衰退していくんじゃないかな。
シニアツアーも、なるべく地方で試合を開催しようという意見が出ている。1人でも多くの人にテレビじゃなく、生でプロの試合を見てもらいたいという思いがあるからだ。シニアツアーを観戦したことがない人も、ぜひ一度足を運んでほしい。きっと楽しんでもらえると思います。
(協力 ザ・リッツ・カールトン大阪)
◆室田 淳(むろた・きよし)1955年7月26日、群馬県出身。太田高を経て日体大に進み、19歳からゴルフを始める。27歳でプロテストに合格し、91年のブリヂストン阿蘇オープンで初優勝。ツアー通算6勝。昨季は日本オープンで6位に入るなどし、史上最年長59歳にして賞金シードに返り咲いた。シニアツアーでも通算12勝を挙げ、06、07、13年と3度賞金王に輝く。家族は妻と3女。180センチ、80キロ。サメジマコーポレーション所属。