日本相撲協会は７日、冬巡業中の福岡県内で付け人の三段目力士を暴行した幕内貴ノ岩（２８）＝千賀ノ浦＝が責任を取り、同日付で現役を引退したことを発表した。この日夜、貴ノ岩は都内の同部屋で引退会見を行った。

　昨年１０月、貴ノ岩は元横綱日馬富士から暴行を受け頭部を負傷。その被害者が今度は加害者となった愚行。モンゴルの先輩である元日馬富士は昨年１１月末に現役を引退しており自身が現役を続けるわけにはいかなかった。

　会見の冒頭では師匠の千賀ノ浦親方（元小結隆三杉）とともに約２０秒頭を下げた。親方から４日の夜、福岡県内のホテルで付け人に暴行し、その後引退に至るまでの経緯が説明された。暴行した理由は飲むべき薬を付け人が忘れたこと。前日、６日夜、貴ノ岩から引退の申し出があり、師匠は再三、慰留したことなども明かされた。

　貴ノ岩は「この度、巡業先で弟弟子に手を上げてしまい大変つらい思いをさせたことに対し弟弟子のお父さん、お母さん、家族の皆様、千賀ノ浦親方、おかみさん、部屋の力士、関係者の皆様、部屋を応援して下さっている皆様、大相撲を支えてくれる皆様、協会に大変ご迷惑をかけて心よりお詫び申し上げます」と謝罪。再び１５秒、頭を下げた。

　そして「この場を借りて弟弟子に手を上げて大変つらい思いをさせたことに責任を取って貴ノ岩義司（よしもり）は現役を引退させていただきます」と、現役引退を自らの口で述べた。

　この１年、角界は激震に見舞われてきた。師匠だった元貴乃花親方は協会との対立を深め、降格処分を下された。秋場所後の今年１０月には同親方は協会を退職。貴乃花部屋は消滅した。

　協会は同事件を始めとした暴行問題や、その後も立行司のセクハラ、元幕内大砂嵐による無免許事故などが続発。研修などを繰り返し根絶へ努力してきた。第三者機関を設置して協会員全員を聞き取り調査。半年以上の時間を要し、１０月下旬、八角理事長（元横綱北勝海）自ら「いかなる暴力も許さない」など７項目による「暴力決別宣言」を行ったばかりだった。