広島ドラ1中村10年以内で正捕手に…恩師・中井監督に活躍誓う
広島のドラフト1位・中村奨成捕手(18)=広陵=と恩師の広陵・中井哲之監督(55)が新春対談を行った。広陵で過ごした3年間が大きく羽ばたくきっかけになった中村奨。プロとして歩み出す2018年は果たしてどんな1年が待っているのか。固い絆で結ばれた2人がプロの世界を戦い抜くための心構えや目標などを熱く語り合った。
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-明けましておめでとうございます。中村選手にとって新たなスタートですね。
中村奨「明けましておめでとうございます。プロとしての野球人生が始まります。まさかカープから1位指名をもらえるとは思っていなかった。ありがたかったし、期待していただいているのはすごく感じます」
中井監督(以下、中井)「おめでとうござます。広陵にとっても、私にとっても1位での指名はありがたいことでした。でも喜びは一瞬だけ。入ってしまえば1位も2位も変わらない。人間性でも、こいつは使いたいと思ってもらえる選手になってほしい」
-1月は自主トレで体作り、そして2月から春季キャンプが始まります。アピールしたいところは?
中村奨「守備に自信を持ってやってきました。打撃は守備の次という認識だし、まずは守備面ですね。特に肩には自信がある。配球やリードなどはまだまだ。これから勉強して成長しないといけないですから」
中井「守備は練習すればするほどうまくなる。まずはキャッチングやスローイングなどをアピールしてほしい。捕手として大事なことは、投手が投げやすいと思うこと。こいつに投げたいと思われることが重要。性格だったり、キャッチングだったり、いろいろ大切な要素がある。高校生とプロではレベルが違うから、1日も早くそうなれるように努力してほしい」
-積極的に話はできるタイプにみえるが。
中村奨「(笑顔で)はい!」
中井「要領がいいですからね。ニコニコして…。カープでは周りはみんな先輩になるけど遠慮しても損しかない。配球どうですか?とか、必ず自分から頭を下げて、どんどん話を聞き出す。そうすることで一生懸命さが相手に伝わるし、教えてもらったことをノートに取っていけば勉強になる。なぜ、この球を投げさせたのかが言えなければ捕手ではないですよ」
-ドラフト1位のプライドはあるか。
中村奨「プライドを持ってやりたい。でも、それに慢心することはないです。入ったら一緒なので。がむしゃらに、謙虚にやっていく。過信したらいけない。素直でいれば周りの人も助けてくれるはずです。間違いがあれば素直にすいませんと言いたい」
中井「プロは技術がないと認められない場所というのは大前提。さらに、人としても素晴らしいと言われてこそ本当のプロだと思う。一般的に野球がうまい選手のことをプロだと思っている人が多い。でも僕は夢を与える職業として考えたときに、技術はもちろんだけど人間的に素晴らしいと誰もが認めてこそ、本当のプロだと思う。子どもたちがこの選手みたいになりたいと思うことが大事。奨成には、そこを一番に伝えたい」
-カープで思い描く青写真は。
中村奨「誰も成し遂げていないようなことをしたい。記録の面でもそうだし、将来的にはカープの看板選手になりたい。10年以内に正捕手になって、長い間野球を続けたい。最低でも40歳までは現役でいたいです」
-広陵は大学や社会人を経由してプロに行く選手が多いが。
中井「中村だって、どこの大学でも行けましたよ。奨学金を借りて大学に行き、プロに入ってそれを全部返すということもできる。大学で社会性や人間性を身に付けてからでもプロ入りは遅くはないと思いますが、彼の場合は母子家庭で、お母さんの大変さも見ていましたから」
中村奨「夏の甲子園が始まる前くらいにはプロに行きたいと思っていました。最後は中井先生と面談して決めました。中井先生からは大学の話をしてもらって迷ったんですが、お母さんのこともありますし、プロで勝負したいなという思いがありました」
-中井監督と中村選手の出会いは中学2年の時。当時、所属していた大野シニアの試合を見学に訪れて出会ったそうですね。その時の第一印象は。
中井「頭の形を見てビックリしました。ソフトモヒカン。ベッカムほどでははないけど、広陵でそんな頭をしていたら『帰れ』ですからね(笑)。あとから本人に聞くと、ちょうど冬休みで髪が伸びていて、大野シニアの監督さんから『気合が入っていない。丸刈りにしてこい』と言われたらしいんです。で、理髪店のおじいちゃんに『上はちょっと残してください』とお願いしたら、こんな頭になってしまったということなんです」
中村奨「丸刈りにしようという意識はありました。で、短い感じでとお願いしたらこうなったんです。でも、中井先生に最初に頭のことを言われたのは驚きました」
-具体的に何を言われたか覚えている?
中村奨「帰ってすぐに丸刈りにしてこいと言われました。それまでは学校の先生にも怒られたことがなかったし、注意してくれる人もいなかった。でも、初めて会った中井先生に注意してもらい、うれしかったです」
-このことが広陵入学を決めた一番のきっかけになった。
中村奨「中井先生の下で野球をすれば、うまくなれるし、人間的にも成長できると思いました。中井先生に試合を見に来ていただいて、話が終わった瞬間に広陵に行きたいと思いました」
中井「あのあと、すぐに丸刈りにしたようですよ。理髪店が閉まっていたけど、ピンポンして、上の部分も横と同じ長さにしてくださいと言ったみたいで。大野シニアの監督さんからも電話がかかってきたので、『広陵に来るとか来ないとかではなく、この子にとって大事なのは人として恥ずかしくない生き方をすること。その上で野球をやった方が良いと思ったので頭のことを注意したんです』と伝えました」
-そして広陵に入学。中井先生の下で学んだ3年間は野球だけでなく、今後の人生においても貴重な3年間となった。そして、広陵魂を胸に赤いユニホームを着ることになる。
中村奨「中井先生の教えというか、当たり前のことをまずはちゃんとしたい。『男として真っすぐに、正直に』という言葉が一番、印象に残っているんです。それを初めて言われたのが中学のときなんですが、その言葉をずっと大事にしてきました。成績もそうだし、人間的にも大きくなることが恩返しだと思う。広陵での3年間は、僕にとってとても大事な時間でした。教えていただいたことに自信を持ちながら、その一方で謙虚な姿勢を忘れずにカープでのプロ生活をスタートさせたいと思います」