「広島紅白戦、白組０－３紅組」（９日、マツダスタジアム）

　手に残る感触が心地良かった。バットの芯で完ぺきに捉えた白球が、快音を残して右翼席へ突き刺さる。直球に絞り、それを確実に仕留めた打撃。広島・安部友裕内野手が首脳陣に、その存在を猛アピールする一発を放ってみせた。

　１－０の三回１死。カウント２ボールから福井の速球に照準を合わせていた。「ホームランは意識せず、センター方向に打ち返すことだけを考えていた。打ちにいって捉えられたのは大きい」。パンチ力も示した一打。練習を終えると、充実感いっぱいに額の汗をぬぐった。

　レギュラー組対サブ組で行われた紅白戦。レギュラー組の三塁には、前日に続きルナが入った。６番・ルナ、７番・エルドレッドが並ぶ重量打線は相手にとって脅威だ。だが、この日見せた打撃はドミニカンに引けを取らない。緒方監督は「スタメンはあるかもしれない」と目を細めた。

　シーズン終盤に落としていた調子は、大一番を前に回復傾向にある。自身にしか分からないフォームの微調整が功を奏した。「使ってもらったら結果を出したい。ラッキーボーイになりたいんです」。安部は前を向いて言葉を結んだ。着実に成長を遂げ、チームに欠かせない存在になった。勝利を呼びこむ一打で、ヒーローになってみせる決意だ。