エルド 進化の秘密は「我慢」だった

 貯金6、2位・中日に2・5ゲーム差をつけて首位を走る広島。チーム打率・273、55本塁打、273得点は、いずれも12球団トップの成績を残す。好調打線の中心を担うのは、5番のブラッド・エルドレッド内野手(35)。リーグ2位の打率・346、同3位タイの14本塁打を誇る助っ人が、来日5年目で見せた変化とは-。進化の内側に迫った。

 エルドレッドが変わった-。

 来日5年目を迎えた助っ人の変化を、他球団のみならず自軍の選手、首脳陣も感じている。リーグ3位タイの14本塁打以上に、同2位の打率・346が驚異。重ねた日本でのキャリアに、昨季手術した右膝の回復など多角的な要因がある中で、石井打撃コーチが明かす。

 「とにかく我慢。ある程度、球種、コースを絞らせながらいかに我慢ができるか。会えば『我慢、我慢』と伝えている。魅力は豪快な本塁打だが、率が下がったら意味がない」

 チームで徹底するのは三振数の減と、出塁率の増。つなぎの打撃ができるルナ、新井らを4番に置き、エルドレッドを5番に固定した。浸透しつつあるチーム打撃の意識が、助っ人に変化を生んだと言う。「慣れと読みが安定している。今年はメンタル面にも変化が見て取れる」とは井生スコアラー。それはデータにも表れている。

 コース別の打撃成績を見ると、外角高めが・714、同中が・500、同低めが・333の打率を残す。昨季は同・167、同・306、同・278だったポイントだ。某球団のスコアラーは「今年は読みがさえていて、ストライクゾーンに入れると打たれるイメージがある」と明かす。

 エルドレッド本人も、変化を感じていた。「今年は悪い球に手を出していない。攻撃的ではなく自分をコントロールできている」。経験、読み、チーム状況など、置かれた立場が要因という。「振らせようとする外角の低めや、内角の高めもバットが出ない。今のチーム状態でやらなければいけないのは、次の打者につなぐことだ」。変化は結果を生み、結果は自信になった。

 セ5球団との対戦でも特に、対中日には打率・515。友利投手コーチは「追い込まれてからの打撃が昨年までと違う」と分析する。「際どい球にうまく対応してミートしてくる。当然、追い込まれるまではブンブン振ってくるから、率を残しながら本塁打も出るのだろう」。14年に・134、翌15年に・122だった2ストライク後の打率も・241に上昇。偶然ではなく必然。好成績の裏には、確かな根拠がある。

 前を打つ新井も、読みにつながる待球の意識が、好成績の理由だと言う。「練習の時から昨年とは全く違う。逆方向ばかり打っているから」。打線として相乗効果が生まれ、12球団トップの273得点につながっている。「自分が打点を挙げられているのも、後ろにカントリーがいるから。相手投手が得点圏でもゾーンで勝負してくれている」と続ける。

 31日から交流戦が始まる。過去、勝ち越しは2度しかなく、昨年は9勝9敗。重要な局面を迎えるが、エルドレッドは力強い。「貢献できているのはうれしいけど、どれだけいい数字を残しても今は関心がないよ。シーズンはまだまだ長い。これからも自分のスイングをしたいね」。全ての要素を支えているのは、フォア・ザ・チームの精神。25年ぶりの頂点に向けて、広島には最強助っ人がいる。

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