柳学園、部員1人の窮地から出場し完全試合で散る

 「高校野球・兵庫大会1回戦、西脇工13-0柳学園」(12日、神戸サブ)

 柳学園が西脇工に5回コールド、完全試合で敗れた。昨夏に部員1人の窮地に陥りながらも、必死の勧誘活動で夏の大会出場にこぎつけた同校。牧野壱成主将は「最後の大会で負けてしまったけど、やりきった。自分のわがままに付き合ってくれた仲間に感謝したい」と号泣した。

 昨年、パ・リーグで最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した増田達至投手(福井工大-NTT西日本を経て、12年・西武ドラフト1位)を輩出した柳学園。だが学校側の規模縮小により、牧野が入学した年を境に募集人員が1学年50人に制限された。

 本来なら10数人の野球部員が同級生にいたはずだが、すべて白紙に。兵庫播磨シニアに所属していた牧野も他県の私学に変更するか悩んだが、そのまま柳学園に進学した。そして昨夏、3年生の引退に伴い部員は牧野だけになってしまった。

 夏休み中、西岡秀和監督(43)は牧野を呼び、続ける意思があるかどうかを確認した。返ってきた答えは「やります!」。間髪入れない即答ぶりだったという。「やることは夏前から決めていた。断念するなら転校とかも考えていかないといけないので」と牧野。そこから孤独な戦いが始まった。

 冬場は同級生の力を借りてキャッチボールやネットPなどを行った。新入生が入学すると、マネジャーと力を合わせてチラシ配布などの勧誘活動を行った。部員が9人そろったのは6月上旬。野球未経験者が多い中、技術的に自身が頭一つ抜けた存在でも「笑顔を忘れないように。自分が不安な顔をすると周りも不安になるので」と気配りを忘れなかった。

 この日も味方は6失策。それでもマウンドから声かけ、笑顔を忘れなかった。13-0と完全試合での敗戦。試合後にはあふれる涙を止められなかったが「完全試合で負けたことよりも、楽しんで精一杯やれた。自分がわがままを言って、仲間を引き込んだ。自分のわがままに付き合ってくれた仲間に感謝したいです」と言いきる。

 西岡監督は「この1年で彼は一回りも二回りも人間的に成長した」と目を細めた。「苦しみが咲かせる花もあり」という言葉を胸に、苦境に立ち向かったキャプテン。「絶対に野球は続けます。野球が大好きなので」と語ったその目は、どの高校球児よりも輝いていた。

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