日本ハム・栗山監督が大谷を責めた理由

 「無視、称賛、非難」。かつてヤクルト、阪神、楽天を指揮した野村克也氏の言葉だ。簡潔にいえば、無視する選手と、称賛する選手と、非難する選手に分けられるということ。非難も称賛にも値しない選手は無視。称賛される選手は一流になる可能性がある。非難される選手はすでに一流で、その非難を乗り越えて超一流になる可能性のあるのだという。

 野村氏のヤクルト時代の教え子でもある日本ハム・栗山監督は、まず選手を叱ることはない。敗戦後の取材。先発投手が打ちこまれても、ここぞの場面で打てなくても、「勝たせてやれない俺が悪い」「選手を信じている」というコメントに終始する。ファンの中には「そう言うだろうと思った」と批判する人もいるが、その姿勢は一貫していた。

 栗山監督の「叱らない指導法」は、一つの信念だ。これまでも「ミスをしたくてする選手はいないんだよ。まず選手がやっていることを認めてあげて、それを救う道をつくることが大事。人のせいにしたら進歩の大敵なんだよ」と語っていた。「今の選手はガツンと言ったら、そのままシュンとなっちゃう子もいる。育った環境を見て、人それぞれに合った接し方がある」とも話していた。

 指揮官には、こんなエピソードがある。中学生の時のことだ。母・由美子さんが観戦に訪れた試合でチームメートが失策し、それが原因となって敗れた。帰宅した後、母が「あの子のエラーがなければ試合は勝ってたのにね」と話すと、「そんなこと言うもんじゃないよ。みんな一生懸命プレーしてるんだから」。エラーした選手が落ち込んでいる姿を見ていたからこそ、母の言葉に怒って言い返したのだった。

 だが、8日の西武戦敗戦後の囲み取材で、これまでなかった栗山監督の姿を見た。6回10安打4失点で今季3敗目を喫した大谷について、報道陣の前でめったにない苦言を呈した。「技術不足。あれだけ打ちやすいところに投げて。以上!」と強い口調だった。大谷には普段から厳しく接してはいるが、試合後に、落ち込んでいるはずの敗戦投手に対し、これだけ厳しい発言をしたことはなかった。

 「叱らない指導法」の栗山監督が、なぜ大谷に厳しい言葉を投げかけたのか。その真意は、かつて大谷に対して語っていた言葉に隠されている。

 「もっともっとできる選手に安心させたくないんだよ」

 「俺は世界一を目指してほしいんだ。あれで変化球の精度も高くなったら、その可能性はあるだろ。スピードだってまだまだ出るんじゃないか」

 21歳の大谷に、まだまだ伸びしろがあると見ている。野村氏流に言えば、超一流になる可能性があると認めたからこそ、非難もするということだろう。大谷の成長を、厳しくも温かい目で見続けている。(デイリースポーツ・水足丈夫)

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