プロが惚れた!敦賀気比の選抜V腕平沼
「全国高校野球・1回戦、敦賀気比4-3明徳義塾」(8日、甲子園)
史上8校目の春夏連覇を目指す敦賀気比(福井)が延長十回、篠原涼内野手(3年)のサヨナラ打で明徳義塾(高知)との初戦を突破した。
さすがのセンバツ優勝右腕もへとへとだった。延長10回、142球を投げ抜いた敦賀気比・平沼翔太投手(3年)はベンチに腰を下ろし「誰でもいいから早く決めてくれと思っていた」。この日の出来を示すかのように表情はさえなかった。
生命線である制球が乱れては苦しむのも当然。3回までに3失点することはあっても、2四球を与えたのは珍しい。打者の背中を通る抜け球もあった。
「ブルペンから悪かった。上半身と下半身がバラバラ。軸足の右足に体重が乗っていなかった」
「スピードにこだわる」と宣言して臨んだ試合だったが、自己最速の144キロには届かなかった。打たせて取る投球に切り替えると、同じ直球にも緩急を付けて、打者のタイミングを外した。
「投手が好き。投手にこだわりがある」という平沼。だが、スカウトの間では打力を推す声が根強い。高校通算21本塁打の強打と、50メートル5秒9の俊足を兼ね備える。この日は4番打者として3安打を放った。
「バットに乗せるのがうまい。甘い球は必ず振るし、低い打球を打てる。フィールディングもうまいから内野もできそう。ただ、投手として評価してほしいという気持ちも分かる」と中日・中田スカウト部長。打者との駆け引きや、勝つための投球術など、教えてできるものではない能力を備えているからだ。「力を入れたら、もっとスピードも出るのでは」。投打両面でスカウトの目を引き付ける素質の持ち主だ。