済美・安楽散った 7失点も意地の130m弾

 「全国高校野球・3回戦、花巻東7‐6済美」(17日、甲子園)

 済美(愛媛)のMAX157キロ右腕・安楽智大投手(2年)が、壮絶な延長戦の末、3回戦で散った。3‐3で突入した延長十回、花巻東打線につかまり4失点。その裏に自ら右中間へ推定130メートルの特大3ランを放って1点差に迫ったが、逆転の願いは届かず6‐7で敗れた。2試合で計320球を投げ14失点。初戦で甲子園の球場表示最速タイの155キロをマークしたものの、怪物右腕にとって初めての夏の聖地は不完全燃焼のまま終わった。

 祈りを込めたひと振りだった。延長十回無死一、二塁。4点差。済美・安楽が放った大飛球は、右中間スタンドの奥深くに吸い込まれた。推定130メートルの特大弾であと1点に迫った。逆転してくれ‐。その願いは届かなかった。最後は7番・盛田の併殺打で敗退が決まると、怪物はベンチで涙にむせんだ。

 「自分のせいで与えた7点。負けたら何もない。悔しさしかない」

 183球の力投は報われなかった。延長十回。もっとも警戒していた花巻東の2番・千葉に中前打を許すと、集中の糸が切れたかのように一気に4点を失った。

 7失点した初戦・三重戦を「スピードを意識しすぎて力んだ。直球に的を絞られ打たれた」と反省。試合前に「(自己最速更新の)158キロを狙う気はまったくない」と宣言し、投球の組み立てを大幅に変えて臨んだ。

 三重戦は全137球のうち変化球が27球(19・7%)。この日は183球中、75球(41・0%)を数えた。序盤3点を先行されたが、中盤以降はスライダーの切れが戻り「0」を並べた。変化球を多投し、制球を重視した投球はしかし、勝利には結びつかなかった。

 2年生エースは「3年生に申し訳ない」とうつむいた。特に金子捕手には「一緒に成長してきた。たくさんわがままを聞いてくれた」と思いは尽きない。ビデオで相手の分析をし、配球を考えるのは金子の仕事だった。安楽は「配球を考えるとフォームが縮こまる」と任せっきりだった。

 延長十回、最後の打者に投げた最後の球は152キロ。“女房役”への感謝を込めた、この日最速のストレートだった。

 2試合で計320球。準優勝した今春センバツでの5試合772球に比べれば物足りない。

 「この2試合、ベストピッチにはほど遠い。それでも抑えるのがエース。自分はまだエースになり切れていない」。チャンスはまだ2回ある。160キロと全国制覇。聖地で2つの夢をかなえるために、怪物右腕はまた厳しい鍛錬に向かう。

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