唐十郎さん旅立つ 移動式テント、「泥人形」など演劇界に革命 84歳、急性硬膜下血腫

 劇団唐組の主宰で劇作家の唐十郎(から・じゅうろう、本名大鶴義英=おおつる・よしひで)さんが4日、急性硬膜下血腫のため都内の病院で死去した。84歳。東京都出身。通夜、葬儀は近親者で執り行う。訃報が伝えられた5日に唐組は、東京・新宿の花園神社で唐さんの代表作「泥人魚」の東京公演初日を迎え、開演前に座長代行・久保井研(61)が取材に応じた。また、唐さんの長男で俳優・大鶴義丹(56)も都内で会見し、演劇界をけん引した父をしのんだ。

 日本演劇界に革命をもたらした“アングラ演劇の寵児”が旅立った。

 唐さんは1日午前に自宅で転倒し、中野区内の病院へ緊急搬送。4日に帰らぬ人になった。劇団関係者によると、最期は親族がみとったという。劇団員は公演準備中に訃報を知り、幹部が弔問へ訪れた。座長代理の久保井は「気持ち良く寝ているような顔でした」と唐さんの表情を伝えた。

 唐さんが最後に紅テントに立ったのは、12年5月の「海星」の演目。その後、同月に自宅で転倒し、以降は療養で第一線から退いていた。久保井が唐さんと最後に言葉を交わしたのは、21年ぶりの再演となる「泥人魚」の地方巡業前の4月13日。「あいさつに行った所、車を止めてある所まで10メートルほど歩いてきて『いってらっしゃい』と声をかけていただいた」と述懐した。

 死去翌日の5日は、くしくも東京公演初日。久保井は「舞台の幕を開けて、元気になった唐さんに見てもらおうと思っていましたが、かなわなかった」と悔しさをにじませつつ、「唐さんはテントとともにいると思うので、何より芝居が好きだったので、客席の後ろから見守ってくれていると思う」と故人を思った。

 唐さんは63年に「シチュエーションの会」(翌年に「状況劇場」へ改名)を旗揚げし、67年から花園神社に移動式の紅テントを仮設。場所を問わずに神出鬼没に表現する演劇スタイルを確立し、佐野史郎、渡辺いっけいら名優を輩出した。88年に状況劇場を解散し、89年に劇団唐組を結成。83年に芥川賞受賞、21年に文化功労者に選ばれた。

 私生活では、67年に状況劇場の看板女優で「アングラの女王」と呼ばれた李麗仙(享年79)さんと結婚し、長男の大鶴義丹が誕生した。88年に離婚し、89年に一般女性と再婚。長女で女優・大鶴美仁音と次男で俳優・大鶴佐助をもうけた。

 役者の道を選んだ子供3人の指針になるだけでなく、我が子同然の劇団員へ「とにかく観客が待っている。何があっても芝居をやるんだ。飯を食うように芝居をやる」とよく声をかけていたという唐さん。演劇人として背中で見せ、育てた84年の生涯だった。

 ◆唐十郎(から・じゅうろう、本名大鶴義英=おおつる・よしひで)1940年2月11日生まれ。東京都出身。1963年に「シチュエーションの会」(64年に劇団「状況劇場」に改名)を立ち上げ。特設の「紅(あか)テント」公演を国内外で続け、根津甚八さんや小林薫、佐野史郎ら多くの俳優を輩出。70年に「少女仮面」で岸田国士戯曲賞、78年に「海星(ひとで)・河童(かっぱ)」で泉鏡花文学賞。83年に「佐川君からの手紙」で芥川賞を受賞。状況劇場を88年に解散後、劇団唐組を結成。映画やテレビドラマにも出演。2021年に文化功労者。

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