酒飲んで帰ってきても…
【9月13日】
張本勲を追悼するTBS「サンデーモーニング」を見て取材場所を決めた。そうだ、ファーム、いこう。なぜ、そう感じたかといえば、番組内で落合博満がこんな話を紹介したからだ。
生前の3000本ヒッターを偲ぶ逸話は興味深かったが、中でもこのエピソードは天晴れだった。
「酒飲んで帰ってきても必ずバット振ってから寝ろよ」
張本は若き日の落合にそんなふうに助言し、鬼才もそれに倣った。張本打法を「お手本にした」という落合だが、その師匠から上達するための心得、努力のやりようまで説かれていた。
就寝前に必ずバットを振って「3度の三冠王」に輝いた落合のエピソードを耳にして、すぐに平田阪神のスケジュールを確かめた。デーゲームのファームリーグ、オリックス戦。甲子園の取材前に寄るには遠出だった。でも、行ってきました富田林バファローズスタジアム。そのスタンドは盛況だったが、若虎打線は盛り上がりに欠けた。
黄金時代の藤川阪神を見つめながら気になっていることがある。
2年後、3年後の世代交代はうまくいくのか…。少なくとも僕の耳には、尼崎界隈から景気のいい話がなかなか聞こえてこない。ファーム監督の平田勝男が「見ててくれよ」と、えびす顔で名を挙げる傑物を耳にしないのだ。 こんなこと書けば、日々SGLに顔を出しているわけではないので、平田から怒られるかも。せめて、「努力の鬼」を感じるためにも、なるだけ現場の空気を知っておきたい。
富田林で眺めた9イニングで一番目立っていたのは、32歳の木浪聖也だった。炎天下がこたえる敗戦の中、2戦連続のタイムリーを含む2安打。最終打席の「左飛」もフルカウントから捉えた鋭いライナーだった。
「やってきた感覚を戻すしかないと思ってやっています。対投手で、色んなタイプがいて、タイミングが変わってくる中で自分がそこにしっかり合わせられるように。ここ2試合はいい内容できているので、打撃もそうですけど、守備も色んなところを守る中で、しっかり動けるように。そういうことを考えて向上させていきたいです」
僕にそう語った木浪の現状をファーム監督はどんなふうに見ているのか。
平田は言う。
「今こうして優勝争いで戦っている1軍に加わりたいという、そういう気持ちしかないと思うよ。最後のレフトライナーも内容は良かった。実力者の選手はそういうものが出るんだよ」
結果が全ての世界で努力のクローズアップは要らない。が、野球の神様はそれを見ている。ホントに不思議だけど、見ているのだ。ゼロコンマ、ミリ単位のいたずら、ボール半個の…説明のつかない運気は運ぶべき者がいる。
若虎が富田林から引き揚げる際、オリックスの首脳から「木浪、頑張れよ!」の激励が飛んだ。敵陣もその努力を知る。報われてほしいのだ。
甲子園へ帰れば苦しい延長戦が待っていた。紙一重の運を引き寄せるために必要なものとは。=敬称略=
