嗅覚がモノをいう19試合
【9月12日】
巨人の新人投手としては13年の菅野智之以来、13年ぶりの2桁勝利到達だという。お立ち台でアナウンサーからそんな記録を伝えられた竹丸和幸は、しかし、素っ気なかった。
「これからもがんばります」
シャイなのか、メディアが苦手なのか分からない。見ているこちらとしては敵意を抱かせてくれる…とでもいおうか。好感度抜群の受け答えをされれば憎らしさも半減するところだけど、このかわいげのないコメントを聞けば、次は必ず打ち崩せ!そんな敵対心が煽られてちょうど良かったりする。
巨人軍の選手はそうでなくっちゃ困る。振り返れば、13年前の菅野も嫌いだった。もちろん人間的にどうこうはないのだけど、とてもルーキーとは思えないマウンドさばきに何度も泣かされ、苦虫を噛みつぶしたものだから。
そんな右腕で思い出すのは、彼が意識する数少ない投手に「藤浪晋太郎」の名を挙げていたこと。トシは違えど同期入団で、ともに新人から3年連続2ケタ勝利を飾ったツワモノ同士。藤浪も同じような感情で菅野を見ていたはずだが、互いに残念だったのでは?と想像するのは、2年目の秋である。
14年のポストシーズンは、阪神がCSファイナルステージで、リーグ制覇の原巨人に4連勝したわけだが、あのスイープの立役者が初戦で勝った藤浪だったことは誰もが認めるところ。逆にいえば、巨人は初戦を獲れなかったことが全てだったように思う。なぜ、獲れなかったのか。菅野が故障で投げられなかったから。両軍若きエースがぶつかっていれば、あのCSはどう転んでいたか。阪神にとっては菅野不在が幸いした秋だったことは確かだ。
あいつがいれば…そんな泣き言は言い逃れにしかならないのがこの世界だが、そういう意味でも、残り19試合の戦力を冷静に見ておきたい。
自軍の宝石クラスは石井大智が戻ってきたこと…この日のように、狭い東京ドームでも安心して見ていられる圧倒的なパフォーマンス、そして、連投の体力が従来のレベルにまで戻ってくればこんなに頼もしいことはない。
一方、巨人の戦力は現在ファームの大勢の復帰が厳しそうな情報を聞くけれど、この日も八回を担った森田駿哉の台頭はデカい。ローテはこの後、小笠原慎之介、西舘勇陽、戸郷翔征、井上温大。憎らしい面々が顔をそろえ…
憎らしいといえば、大一番に揃って先発した坂本勇人と丸佳浩の起用について、巨人監督代行の橋上秀樹はこんなふうに語っていた。「こういう試合になると、選手の格、顔を期待して…」。確かに、このゲームで一番憎らしかったのは竹丸よりも、初回先頭、近本光司が放った三塁線の打球を好守でシングルに封じた坂本。二回にヒットを放ち決勝のホームを踏んだ坂本…敵将の用兵に応えた37歳が一番、憎ら…
10年ほど前だったか、藤浪晋太郎は僕にこんなことを言っていた。
「ジャイアンツは勝利への嗅覚をもっているんですよね」
時代は変わった。その嗅覚を黄金期の虎の代名詞にしたい。=敬称略=
