大山悠輔に聞いた「責任」
【7月26日】
ゲームセットから10分、20分経っても出てこない。ヒーローインタビューを終えた佐藤輝明、村上頌樹が囲み取材を終えてもまだ…。見落とすはずのないベンチ裏の通路…。
しんがりでクラブハウスへ引き揚げたのは大山悠輔である。
前半戦ラストゲームで大山に聞きたいことがあった。そりゃ、30分もくれれば山ほどぶつけたいことはあるけれど、汗だくの決戦後にそんなわけにもいかない。限られた時間で確かめたかったのは、こんなことだ。
「お疲れさま」と前半戦を労い、こんなふうに問いかけてみた。
体調も含め、ここまで不本意な時期もあったと思う。しかし、全試合を通じて「足」が動いていた。
「どうですかね…」
大山は汗を拭ってはにかみ、こう続けた。
「しっかり準備というか…。しんどい時期もありますし、思ったような結果が出ない時期もありましたけど、試合に出ている以上は責任もありますし…。というところで、そのとき自分にできる100%の力を出さないといけないとは思っていますので…」
球宴前ラストゲームの巨人戦は4番とエース、彼らの大黒柱然とした活躍で1-0勝利。ファンにはビールのうまい熱帯夜になった。そんな日に、じゃ僕は何をさかなに飲もうか。
1点リードの八回、先頭で来た。
集中して、ずっと見た。打ってから右打席を飛び出し、一塁へ駆ける背番号3の姿を…。一瞬も抜かなかった。目いっぱい腕を振る。これぞ全力走。そんな背中を見させてもらった。
カウント1-1から堀田賢慎の変化球を捉えきれなかった大山は、しかし、その打球がショートへ転がると迷いなく両腕を振った。記録はEだったが、Hをつけたくなる走りだった。
巨人に限らない。他球団の内野陣を取材すれば、大山を嫌がる理由に「全力走」を挙げる者は少なくない。プロの内野手の「体内時計」はシビアに設定されている。ワンファンブルでジ・エンドかどうか。とりわけ接戦でこのプレッシャーのある、なしの差は大きい。泉口友汰が大山のゴロをはじいたこともこれと無関係ではないと思う。
大山は僕に言った。
「自分もそこを大事にしていますので、こだわってやっていますし、それが自分にかえってくると信じてやっていますので…。足が速いとか遅いとかではなく、いま出せる100%の力を出すことは、自分の中で大切にしています。それぞれ考え方があるので、それが全てではないですけど、僕はそういう思いを持ってやっています」
同じことをかつて金本知憲から聞いたことがある。不動の主砲だった金本も「責任」という言葉を使っていた。
首位タイで後半戦へ向かう。藤川球児は試合後の会見で「目指すところは一つですから」と言った。この先、攻守とも忍ぶ時期があるだろう。しかし、闘う個々がそれぞれの持ち場で責任を果たせば、目指す「一つ」、その輪郭がはっきり見えてくる。=敬称略=
