「遥人のために」が溢れる
【5月13日】
定石を無視した「イケヤマジック」に敗れた。徹底した「バントしない」戦法はハマればこわい。ヤクルトが1点を追う八回無死一塁。さすがにここはバント……じゃなかった。
代走並木秀尊に二盗を決められ、ルーキー石井巧にプロ初安打となる同点打を許してしまった。さらに、なお無死一、二塁でもバントのサインは出ない。打て。打て。打て…。土壇場でもここまで徹底されれば気持ちいい。
それがチームカラーとして根付き、それがヤクルトならではの凡事であれば、そういうものだと思って戦うしかない。かといって、こちらがそのスタイルに倣うかといえば、それはないだろう。残り100試合以上、阪神はこれからも阪神の凡事を徹底して戦っていくに決まっている。
投手中心の守り勝つ野球…。
その枢軸が大記録に挑んだ首位攻防第2ラウンド。猛虎は敗れはしたが、この夜、書きたいことが出てきた。
「高橋遥人を勝たせたい思い」が伝わるプレーがいくつもあった。中でも痺れたのは七回の守り。遥人が降板した直後、湯浅京己が先頭増田珠にセンターの左へ鋭い打球を飛ばされたが、ここで素晴らしいプレーが生まれた。
二塁を狙った増田を8-6-4、完璧な中継で間一髪刺したわけだが、肝はセンター高寺望夢の覚悟だったように思う。自身の右側に転がってくる打球だから「安全」を優先すれば回り込んで正面で捕りたくなる。が、高寺は「時間」を優先し、逆シングルで捕って即座に小幡竜平へ返球した。
小幡から中野拓夢への送球も、中野のタッチも、ともに絶妙だったが、これらを成功に導いたのは「高寺の逆シン」。ゼロコンマの世界で勝てる守備力は「内野手」として培われた体内時計に依るところが大きいのかもしれない。結果的に八回に逆転を許し、遥人の勝ちは消えた。が、こういうプレーが凡事になれば、球児の理想の野球、あるべきセンターラインに近づく。
惜しくも高橋遥人の4試合連続完封はならなかった。連続イニング無失点も「32」でストップし、69年に江夏が成した41イニング連続無失点の阪神左腕の最長記録に並ぶことも叶わなかった。数々のレジェンドの記録を掘り起こす遥人だけど、とりわけ江夏の記録を超えてほしい気持ちはあった。なぜか。それは江夏が「阪神歴代最高の左腕」といわれているからである。
先週、SNSでフォロワーさんにこんなふうに投げかけてみた。
「阪神の左腕」といえば?
コメント欄とDMには…山本和行、福間納、仲田幸司、田村勤、古溝克之、遠山奬志、能見篤史、井川慶、J・ウィリアムス、岩崎優、伊藤将司、及川雅貴…あくまで僕のインスタに書き込んでくれた方々の愛着だが、様々な年代で思い思いの左腕が浮かんできたのだと思う。そんな中で「最多得票」は江夏豊、そして、高橋遥人だった。
遥人のために…。そんな思いがチームに溢れる。溢れさせる魅力がある左腕だから、どんどん「歴代最高」を塗り替えてほしくなる。=敬称略=
