熱かった新井Jr.の「カモン」
【4月13日】
甲子園の「伝統の一戦」で新井が打った!吠えた!と、書けば、いつの時代の話やねんと言われそうだが、この日曜日のことだ。背番号25の快音にスタンドは大歓声に包まれ…。
新井は新井でも、ともに阪神で4番を担った兄弟、貴浩でも、良太でもない。貴浩の長男、亮規浩(あきひろ)が聖地の深い右中間へ目の覚めるような素晴らしい打球を放った。
甲子園で関西学生野球春季リーグの「関関戦」を観戦した。目当ては様々あったがその大きな一つは、関学大4年、左のスラッガー新井亮規浩の現在地を見ることだった。
彼をちっちゃな頃から知る。一緒にメシも食った。だから、こんなに立派になった姿に感無量。親戚のおっちゃんのような心持ちで出番を待った。
六回に「代打・新井くん」がコールされると、大きな拍手が起こった。観客席はみんな「関学の背番号25」が誰なのかよく知っている。
いけ。打て。えっ?何それ?想像を超えるスイングの強さ、強烈な弾道にビックリだ。背番号も赤いリストバンドもさることながら、バットを放り投げる仕草は、右、左の違いこそあれ、お父さんとそっくり。さらに、二塁に達すると関学ベンチに向かって大谷翔平ばりの「カモン!」。その後も快音を響かせ、リーグ戦初安打含む3打数2安打。「新井、えぐい」。客席のあちこちでそんな声が漏れていた。
関学大の応援席には新井ファミリーが勢ぞろい。試合後、ご家族と連絡を取って甲子園の外周で落ち合うと、関大2年の弟・新井颯真もやって来た。そして、ほどなく本日の主役が登場。お世辞抜きにえげつない打球だったので打撃の話をまじめに聞いてみた。
角度がつけばスタンドインだね?
そう聞けば、亮規浩は言う。
「いい打ち方をしていたら勝手に角度はつくと言われていましたので…。でも、きょうは結構いい感じで振れたかなっていうのはあります」
二塁上のあのパフォーマンスは?
「ビハインドでしたので、あそこで盛り上げて、『いけるぞ!』っていう空気をつくりたかったというか…」
そういえば、あなたの父は現役時代、僕に言っていた。試合中のガッツポーズの是非で悩んでいたとき、『お前のガッツポーズはベンチに勇気を与えることがあるんだ』と、信頼する先輩から言われ迷いがなくなった、と。
この日、関学大は関大に敗れたが、亮規浩の一打が甲子園の空気を瞬間的に変えた。これ、プロも同じ。カープ時代の新井貴浩に「ガッツポーズをやれ」と諭したのは、メジャーの伝統2球団で大活躍した黒田博樹。彼も意識的に拳を握り、吠えることがあった。
阪神では今シーズン坂本誠志郎がヒットを打ったあとベンチを鼓舞するような姿が目につく。冷静なキャプテンのそれはビハインドでも球場の空気を変える。きょうから始まるプロ野球の「伝統の一戦」は藤川球児がかねて言うように「受けることなく」束になって戦う。塁上のガッツもいい。満員の甲子園を味方につけたい。=敬称略=
