ハイレベルな定位置争い

 【4月11日】

 佐藤輝明の2発に見惚れた試合だ。クリーンアップ3人衆に本塁打が飛び出した第2戦だから、7番打者の4打席は虎番の紙面に1行も載らないかもしれない。が、いやはや大きかった。

 中川勇斗、四回の四球である。

 1死一、二塁の局面はゲームの流れを左右するシーンに見えた。大野雄大-木下拓哉のバッテリーは徹底して内角の厳しいコースを突いてきた。当然中川に詰まらせてゲッツーを取りたかったに違いない。序盤に森下翔太、大山悠輔に被弾した大野だけど、尻上がりに調子を上げる技量のある左腕だ。この時点で阪神のリードは1点。下位で繫いで得点できれば中日ベンチに与えるダメージはでかい。そんな視点で見ていたので、フルカウントからファウルで粘り、最後はしっかり見極めて満塁にした中川に拍手を送る。結果的にこれが伏見寅威の犠飛、伊原陵人のタイムリーまで呼んで4-1。中川の四球は、昨年彼に被弾した大野の警戒心とは無縁ではなかったと思う。

 前川右京の劇的な逆転打から一夜明け、レフトのスタメンに注目したが、藤川球児は中川を起用した。その根拠は総合的な「相性」だったと察する。

 中川は昨年バンテリンドームで2発本塁打を放っていた。8月に金丸夢斗から。9月に大野から。この日先発の大野とは対戦打率・333(6打数2安打)。おまけに彼は愛知県小牧市出身。今年も故郷に錦を…球児からのそんな期待感もあったに違いない。

 完勝のゲームを振り返れば、その中川から快音は生まれなかった。福島圭音の躍動が目覚ましく、前夜は右京がヒーローになって脚光を浴びた。レフトのレギュラー争いが混沌とする中で開幕スタメンを勝ち取った中川にとっては久々に巡ったスタメン機会、しかも「恵方」だから、いいところを見せたかったはずである。1打席目は併殺に倒れたが、4打席で2四球。欲をいえば1本ほしかったが悪くない。

 今のところ、レフトは今年も「日替わり」の様相を呈している。当然、ベンチのスタメン起用の根拠に「相性」は含まれる。対戦投手の左右もその一つだが、できるだけ苦手をつくらない者がレギュラーに近づくことは言うまでもない。そういう意味でのバランスがいいのは右京だろうか。通算成績で対左投手の打率が対右投手のそれ(・258)を上回る・266。一方の中川は対左投手の打率・260に対し、対右投手は・143。高寺望夢も対左投手の成績が対右に比べ1割ほど低い記録が残る。が、もちろんベンチは守備も含めた総合的な判断で起用を決めるわけで前出の数字が全てではない。

 ショートもしかりだ。規定打席に到達し、セ・リーグの打率上位に名を連ねた木浪聖也だが、この日は守備でも辻本倫太郎の難しい打球を好捕した五回のプレーが光った。一方、九回の守備から出場した小幡竜平はカリステの生還を阻止した完璧な返球が目を引いた。打線の主軸が盤石の阪神においてレギュラー定着を競う顔ぶれもハイレベル…こうなれば、この先もカード勝ち越しは揺るがなくなる。=敬称略=

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス