劇団四季の幕が下りて

 【1月5日】

 劇団四季のミュージカル『ゴースト&レディ』を観た。遠路の劇場も厭わない自称「観劇好き」だけど、最近は遠ざかっていた。そもそも四季のチケットはプラチナでなかなか…

 今回思い立ったのは阪神電鉄本社役員のおかげだ。旧知のその方から薦められ、同作初の大阪公演を6列目で堪能させてもらった。梅田の大阪四季劇場は正月から満員御礼で終幕はカーテンコール4度の大喝采。圧巻だった。

 フローレンス・ナイチンゲールの逆境に立ち向かう信念を描いた『ゴースト&レディ』の大阪公演は5月まで続くのでネタばらしは控える。が、個人的に刺さったのは、ナイチンゲールがなぜ従軍看護婦としてクリミア戦争に参加したのか、その謎が解けたこと。 そんなことも知らなかったのか?と笑われそうだけど、幼いころ伝記をかじっただけの浅はかな知識は「ナイチンゲール=野戦病院の天使」で止まったまま。令嬢だった彼女が戦地で伝染病が蔓延する惨状を知ったのは「タイムズ紙」の従軍記者W・ラッセルの新聞記事。看護の凄惨な状況が報じられることがなければ「白衣の天使」を敬う史実はなかったかも…。

 舞台は19世紀のイギリスだから、あれから200年ほど。野戦病棟を取材する使命感は想像もつかないが、メディアの在り方が様変わりする21世紀初頭の正月に胸を打たれたことは確かだ。仕事、がんばろう。四季劇場の幕がおりた後、そう思った。

 さて、タイガース取材20余年目の仕事始めは球団の年賀会から。阪神球団社長の粟井一夫は挨拶の冒頭、メディアへの感謝を語った。

 「2025年を振り返ると、90周年の節目にリーグ優勝という、一つの成果を出せた。そのおかげで沢山のメディアさんに取り上げてもらい、感慨深いオフを過ごすことができました」

 この流れ、てっきり闘将のあの名言を復活させるのか、と。しかし、粟井はこのあとフロント陣へ訓示を行ったので虎番の囲み取材が解けたあとに聞いてみた。最下位のチームを預かった星野仙一は「マスコミも戦力や」と語ったが、いまは黄金期。常勝の阪神は我々の存在をどういう位置づけで考えていくのか。粟井は言う。

 「私の中では、同じ野球事業を構成していただいている一員だと思っていますので、ある意味、同志ですよね」

 長年ファンとの橋渡しを担っていたとされるプロ野球メディアだが、SNSの隆盛により「オールドメディアによる橋など不要」と考えるファンも少なくない。藤川球児は賢い人だからそのあたりを心得ながら我々に対応しているように映る。が、この年始、大事なことを忘れないようにする。

 球児がSNSの発信を一切やめて重責に就いたことを。これが何を意味するのか。第36代の指揮官は囲み会見でよくこんなことを言う。

 「そのあたりは皆さんにお任せしますよ」

 橋の向こう側へ正しく伝えてください…。その信頼を失わない決心を新年のあいさつに代える。=敬称略=

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