世界経営者会議の言葉
【12月4日】
DeNAという会社は「社員の起業を支援する」という。だから「いつか起業したい」と思っている社員がほとんど。ベイスターズオーナーであり会長の南場智子が言うから間違いない。
この日のNIKKEI FORUM「世界経営者会議」で南場は語った。
「起業の成功には運もあるのも事実だが、失敗したら企業(DeNA)に戻ってもらえばいい。起業するような人は失敗しても優秀だ」
この発想は旧態依然の体質からは生まれようがない。手相がすりきれるくらいゴマをする文化を「良し」する組織のトップにはない着想である。優秀な人材の本質にたどり着けないまま…というか、そもそも現状を疑わないのだから、発想しようがない。
「大企業は石灰化しており、変化が苦手だ」と、南場は続けた。横浜スタジアムで見かけたことはあるけれど、普段取材しないし、どんなリーダーかよく分からない。
でも、彼女の言動を見聞きすれば本質は伺える。例えば、政府が目標に掲げる「2030年までに女性管理職比率を30%に…」について、「経営者として性別で評価をしたことがない」と語る南場は、そもそもこのパーセンテージを定めるつもりがない。なぜか。
人材登用の基準は「仕事ができるかできないか」だから。
焦点をぼかさない目利きができるかどうか。プロ野球の指導者にも求められる真贋(しんがん)の目である。
さてここからは、敵軍の将について2カ月ほど前の続きを書く。
あれは9月の終わり。「カープ新井貴浩監督続投」の一報を読んだ日に当欄でこんな具合に綴った。
【来シーズンは阪神と優勝を争い、セ・リーグを盛り上げてもらいたい思いを込めて…。新井はどんどん嫌われればいい】
あくまで僕のモノサシだけど、結果を出したリーダーで、全方位から好かれる「いい人」はいない。
そういう意味で新井にはプロ野球の監督は不向きだと僕は思っていた。だって「新井のことが嫌い」という人を聞いたことがないから。誰からも慕われるいい人では勝てない。でも、彼の他者貢献でひたむきな熱量を知るからこそ、敵ながらもっと勝ってもらいたい…って何を書きたいか分からなくなるが、2カ月前の当欄に「この続きは本人に直接聞いて書く」と掲載したので、約束を守りたい。
このオフ、球場の外で新井と会って様々話す中で聞いた。
「選手に好かれたいと思ったことは一度もありませんよ」
就任以来3年間のスタンスをそう語った。特別な発言とは思わない。だって藤川球児も阿部慎之助もみんなそうに違いないから。僕に言われなくとも「嫌われる覚悟」で就いた重責だ。 失敗しても優秀な者を見分け、仕事ができるかできないかを無二の基準にできるか。転換期の難しい舵取りを担う赤い背番号25は虎の連覇を阻むべく気の休まらないオフを過ごしている。=敬称略=
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