安芸を潤す8の字構想

 投げ込む工藤
2枚

 【11月12日】

 ネーミングライツについて議論が交わされたのは9月の安芸市議会だったという。「安芸タイガース球場」の名は売らない。その方向性は不変だそうだ。売らない、というか売れない…。

 そんなニュアンスだろうか。安芸市役所のタイガース担当窓口を取材すれば、地元の気概を感じた。

 安芸に来て早々、なぜ市役所にお邪魔したのかといえば、この日の高知新聞がきっかけだった。

 【高知県が11日、ネーミングライツのパートナーを募集していた県有2施設で新たな愛称が決まったと発表】

 朝刊にそんな記事が載っていた。

 おととい阪神が中日と練習試合を行った春野運動公園の競技場は来年から「GIKENスタジアム」に変更される。圧入機メーカー技研製作所が年間550万円で3年契約したようだ。

 スポーツ施設のネーミングライツは年々全国に広がっており、ご存じ沖縄宜野座のキャンプ地も企業に命名権を売って収入を得ている。高知県の施設もそんな潮流に乗っているので、もしかしたら安芸の球場も?

 そんな臆測で市役所を訪ねたわけだけど、空振りだった。でも、他の窓口で魅力的な話を聞かせてもらった。

 「『四国8の字ネットワーク』という事業計画がありまして」

 建設課「自動車道推進室」の担当者が教えてくれた一大プロジェクトである。残念ながら独自ネタではない。既にメディア向けに公表されているそうだけど、これはつまり、四国四県が将来「8の字」のように高速道路ですべて繋がるインフラ整備事業である。

 確かに高知市内から安芸へ車を走らせれば、高速道路の高架建設作業が所々で見られる。建設課によれば、まだ「完成時期は未公表」。予定では「安芸西」という出入り口が設けられ、関西からも、四国三県からも、「安芸タイガース球場」へのアクセスがこれまでよりも格段にスムーズになる。

 「土台をつくっている最中ですね」

 そう語る安芸市役所の担当者も数年先の完成が待ち遠しそうだった。

 「土台」は一朝一夕では…。こちら安芸のブルペンである。

 この日、タイガース工藤泰成が投じた300球を1球逃さず見させてもらった。指揮官の藤川球児、投手、バッテリー部門の全コーチ、また、オーナー秦雅夫、球団社長の粟井一夫、球団本部長の嶌村聡らフロント陣も熱視線を送る中、23歳が最後はブルペン一人旅、1時間半ぶっ通しで腕を振った。 200球を越えたあたりからさすがに握力が鈍ったのか、途中大きく抜けるボールも2球あった。取材陣の中にはトイレを我慢できず途中離脱する者も…。僕は足が棒になりそうで血流を流すのに必死…って、おっさんの都合はどうでもいい。汗だくの工藤が「完投」すると、見守ったファンから温かい拍手が送られていた。

 四国が「8の字」で結ばれれば、工藤がプロの礎を築いた徳島の恩人たちも安芸が身近になる。球児の手ほどきで手応えを得る泰成の進化は「∞」。大成が楽しみな秋である。=敬称略=

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