晋太郎の誕生日に思う
【4月12日】
藤浪晋太郎が31歳になった。この日は海の向こうで仲間からハッピーバースデーを歌ってもらっただろうか。プロの世界で12年。ルーキー年からもう干支が一回り…光陰矢のごとしだ。
「晋太郎の誕生日」で思い出すのは9年前だから彼の4年目。16年4月12日の先発登板である。DeNAを相手に七回途中3安打3失点で勝利投手となり、開幕から負けなしの3戦3勝。打ってはプロ初の三塁打のオマケ付きで22歳のバースデー星を飾った。
あらためて書くのもなんだけど、高卒4年目の4月で既に38勝を挙げていたのだから恐るべし。さすが甲子園の春夏連覇右腕!当時はそんなふうに称えられていたっけ。成績もオーラも松坂大輔や田中将大と双璧の大物だったし、こちらも夢を見させてもらった。
大山悠輔、近本光司、木浪聖也…
バックネット裏の記者席から甲子園のフィールドを見渡せば、今年31歳になる「晋太郎の同級生たち」が阪神のスタメンを彩る。残念ながら、彼らのバットからかつての仲間の誕生日を祝う逆転打は生まれなかったけれど、そんな中、僕はスタメン唯一の高卒野手にあの頃の晋太郎を投影するのだ。
高卒4年目の春。前川右京である。
ここまでの実績でいえば、晋太郎には遠く及ばないし、そもそも投手と野手。歩んできた道も何もかも違う両者だけど、野球に対する「姿勢」というか、見た目とのギャップというか…僕の主観では様々かぶる。例えば…取材で僕が声を掛けると、どんなときも立ち止まり、目を見て話すところ。この日も試合後の通路でしっかりこっちの目を見て…。
「練習で良くても試合でダメだったらダメなので、試合で結果を残すためにはどうすればいいか。徐々に良くなってきているとは思うんですけど、でも、まだまだ全然なので…」
二回に美技。六回に長打。九回は渋くチャンスメークし、前日に続く2安打。右京に何を聞いたかといえば「和田豊の教え」である。今年から巡回コーディネーターを担う和田はファーム監督時代から右京が師事する指導者で練習を眺めていても和田の言葉に熱心に耳を傾ける姿をよく見かける。
和田からの指南は2つ。
「メンタル面はシーズンを長い目で見て考えていくこと。バッティングの技術面ではつっこんで衝突して間が取れていない、そこを何とか」。これらを克服するプロセスの「現在地」を教えてくれたというわけだ。そもそも和田とは打者としてのタイプが違うこともあって右京に聞いたことがある。ホームランバッター、目指している?
「目指しません」
大山が「僕より飛ばします」と称えるスラッガーが地に足をつけ、初の規定打席到達を目指す4年目だ。
思えば、ドラフトで藤浪の当たりクジを引き当てた当時の監督が和田豊だった。「性格的には現代っ子なんだけど、浮ついていない。努力する才能の塊だよ」。和田の右京に対するこの評価を聞けばまた海の向こうで奮闘する晋太郎を思い出す。=敬称略=
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