木浪×スラッガー

 【12月26日】

 クリスマス前に木浪聖也に会ってきた。といっても、あらかじめこちらからスケジュールを確かめ訪ねたわけだけど、V旅行から帰ってきたばかりの彼はとてもいい顔をしていた。

 ハワイ、楽しめた?

 「楽しかったです」

 物価、やばかったでしょ?

 「高かったですね…」

 いや、本筋は土産話ではない。ここは寒波の大阪市内。木浪がシーズン終了の挨拶と「日本一」の報告に訪れたのは、用具提供を受けるメーカー、久保田スラッガー社(久保田運動具店)である。

 プロ野球選手にとって束の間のオフシーズンだけど、年の瀬になれば、もう自主トレ、キャンプの準備で慌ただしくなる。

 「グラブ、紐を変えて柔らかくしておいたから」

 「ありがとうございます。これが一番、安心感あります。1月の自主トレで使うのはこれがいいですね」

 同社担当者との打ち合わせにも余念がない。新版のカタログを見ながら、用具、練習着の色味、サイズを伝える。

 「この時期にここで色々言っているのが一番楽しいんですよ」

 メンテナンスの完了したグラブを手に取り、そう話す木浪の目はキラキラと野球少年のよう。確かに愉しそうだ。

 社会人(ホンダ)時代にスラッガーのグラブを愛用していたことから、阪神でも入団時からそのアイテムがトレードマークとして定着している。今シーズンは念願のベストナイン、そして、何よりも三井ゴールデン・グラブ賞に輝いたことで、これ以上ない同社への「恩返し」にもなった。

 阪神でスラッガーといえば長年その象徴は鳥谷敬だったけれど、令和のそれは、木浪、中野拓夢、また、今年は近本光司も同社製のグラブを愛用したことから「虎のセンターライン=スラッガー」が定着。そのトリオがすべてゴールデン・グラブ賞だから誇らしい。

 プロ野球選手にとって12月は家族サービスの時期でもある。木浪はこの日、妻子とともに大阪へ。

 「家族はいま僕が家にいることが楽しいんだと思います」

 それはもう間違いない。シーズンになればチーム最早で球場入りする選手。ステイホームの時間が短いのだから、できるだけ一緒に居てあげて!そんな節介もしたくなるわけだけど、当人の胸中は日に日にモードチェンジへ向かう。自主トレの話題を振ると…。

 「昨年の倍くらいやりたいと思っています」

 周囲からは「最高のシーズンでしたね」なんてよく声を掛られるはず。が、木浪が見据える「最高到達点」はまだ先にある。鳥谷×スラッガーの継承。向こう10年そんな期待感も…。本人とパートナーメーカーのやり取りを見ればそう感じる。「練習を倍やる」といえど空回りするタイプではない。 地に足をつけ正しい努力を追求しながら2月1日へ歩を進める。木浪聖也×スラッガー=∞。=敬称略=

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