アスリートの「人間性」

 【10月3日】

 スポーツによる人間教育を最近考えさせられることが多い。アジア大会のサッカーでもスポーツマンシップが世界的に話題になったばかりだけど、アマもプロもアスリートである前に-を思う。

 この業界で主に野球とサッカーを長い時間取材してきた。アマ時代から見てきた選手がプロの舞台で有名になり、日本代表にまで成長する。そんな過程を傍らで見られるのも醍醐味であり嬉しい。

 と同時に、その選手が「一流」であればなおこちらの心も満たされる。「一流」の定義を考えるとき、必ずその者に備わる「礼儀」を見るのだけど、果たしてそれはどのカテゴリーで教わるものなのか。例えば、プロ野球なら「高校時代の恩師に恵まれた」という選手の話をよく耳にする。

 「社会に出て僕の態度が悪ければ、○○先生(監督)の顔に泥を塗ることになりますから」

 高卒のある選手と食事をした際そんな発言を聞いたこともある。 スカウトが「一年で一番バタバタする」という10月。僕も各地のアマの指導者とお会いすることが多いけれど、いつになっても、プロ野球選手と接すれば、彼らの恩師の顔がまず浮かぶものだ。

 今年よく挨拶するようになったタイガースの選手でいえば、石井大智という投手の礼儀正しい人柄は、どのタイミングで身についたものなのか気になった。どんな方から、どんな教えを受けたのか考えたりもするし、木浪聖也と話していても、そんなことを思う。

 人伝(づ)てに木浪のお母様から「吉田さんに宜しくお伝えください」と、掲載記事を感謝された日があった。その話を木浪本人に伝えると、「え?そうなんですか?」と笑っていたけれど、木浪を育てた親御さんがどんな方なのか青森まで会いに行きたくなったり野球選手である前に人として魅力ある選手と接すれば、その恩人を訪ねてみたくもなるものだ。

 そういえば、この日、甲子園のアルプス席で取材に応じた岡田彰布が、日米通算250セーブを達成したオリックス平野佳寿に触れこんな話をしていた。

 「平野という選手を見るのは、成績とかそんなんじゃなしに、例えば(出身の)京産大へシーズン終わっていつもあいさつへ行くとかな…。俺は大事と思うんよな」

 オリックス監督時代の10年に平野をリリーフへ配置転換した岡田は、かつての教え子に備わる一流の人間性にも賛辞を送るのだ。

 さて、夜風が冷たくなってきた秋口はそんなあったかい話題ばかりではない。阪神球団は3日、第1次戦力外通告選手を公表し、その中に16年セ・リーグ新人王の高山俊の名前もあった。

 彼を知る者から、その人柄をよく聞いていた。天才的な打撃センスばかりが注目されてきたスラッガーだけど、僕は高山俊の人間味をもっと書きたかった。彼は「現役続行」を希望していると聞いたけれど、当然そうであってほしいし、近いうちにじっくり話をしたい思いが強い。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス