露出を増やしていこう

 【12月13日】

 久保建英が日本テレビ「Going!Sports&News」に出演した。FCバルセロナの下部組織時代からその「足もと」の虜になった僕にとって待ちに待った、日本では初の生出演である。

 カタールから帰国し、すぐ所属クラブ「レアル・ソシエダード」に合流するためスペインへ出発しなければならない。できれば、予定をタイトにしたくない。それでも久保が出演を決めたのは、日本代表主将・吉田麻也からの「お願い」があったからだという。

 「これからサッカーの注目度が高まる。自分たちの露出を増やしてサッカー人気を高めていこう。みんな頼むぞ」

 快進撃の日本代表は決勝トーナメント初戦のクロアチアに敗退。その翌日チームが解散する際に、吉田は共に闘った仲間たちにそう呼びかけていたのだ。

 「それがなければ、きょうここにいないんで。そのくらいのリスペクトを麻也さんにしている」

 久保はそんなふうに明かしていた。吉田の呼びかけも、それに応えた久保のアクションも素晴らしいと思う。

 代表人気にかげりが…サッカー界の危機感はもちろん侍戦士にも届いている。19年にJ1の1試合平均入場者数が史上最多を記録したが、その後、コロナ禍の制限もあり苦境を強いられた。代表戦の低迷で驚いたのは、今夏開催されたE-1選手権の香港戦である。欧州組不在とはいえ観客制限無しではワーストとなる4980人。Jリーグ開幕前でも日本代表の国際試合でこれほどの空席は、僕の知る限り、あまり記憶にない。カズ、中田英寿、本田圭佑ら、強烈なインパクトを放ったスターが不在。地上波の人気サッカー番組も次々に放送終了した。やばいよ、これ-。吉田も、久保も、日本が世界を驚かせた「W杯の灯」を消さないよう行動に出たわけだ。

 危機感という意味では、プロ野球界だって他人事ではない。

 が、ファン獲得に有益であるはずのテレビ出演については一部でネガティブにささやかれる。

 オフに露出が多すぎると、翌年活躍できない…いや、正確には、活躍しなかった選手に対して「オフにテレビに出すぎたからだ」という向きのバッシングだ。この類は今も昔も耳にするけれど、あのねぇ、睡眠と食事、排泄以外、すべての時間を自主トレーニングに捧げなければいけませんか?っちゅう話である。

 この日、セ・リーグ投手三冠の青柳晃洋が読売テレビの情報番組「す・またん!」に生出演した。一流選手がメディアに露出することで、世間の関心が野球に向き、そこから競技の裾野が広がっていく。コロナ禍で制限がかけられた3年間、プロスポーツ界が失ったものは少なくない。青柳が2年連続活躍しテレビに出ることが意義深いし、また、どれだけ露出しても「勝てる」ことを証明することによって不毛なバッシングはとまる。来季「アレヤギ」さんになってそんなものを蹴飛ばしてもらいたい。=敬称略=

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