ブラーヴォな傾聴力
【12月8日】
カタールから帰国したサッカー日本代表が首相官邸を表敬訪問した。ふだん取材されることのない官邸担当の記者から「今の気持ちをひと言で」と振られた長友佑都は、控えめにアレを放った。
「ブラボー!」
聞く側もそれを誘っていたし、聞かれた長友もそれと分かってノッた。いまや日本中のあちこちで聞こえる流行語だけど、そもそもブラボーの語源って知ってる?と聞かれて、即答できる人はどれくらいいるだろうか。
ブラーヴォ=bravo。
「a」にアクセントのイタリア語である。ブラーヴォが由来のブラボーは、長くインテルミラノでプレーしていた長友にとっては日常の感嘆詞?
「優れている」「立派な」を意味し、本場フィレンツェのオペラで「ブラ~ヴォ~」と叫べばそれは「素晴らしい!」「よくやった!」のニュアンス。若い頃、イタリアをよく独りで放浪した僕はスタジアムでも劇場でも、それを何度も聞いたことがある。だから、長友にはぜひ本場のアクセントで「ドーハの歓喜」を叫んでほしかった…なんてワケ分からんこっちの欲求はどうでもいいか。
さて、そんな長友がスペイン戦のあと発言した「リバウンドメンタリティー」について、きのうの続きを書きたい。
「逆境をはね返す精神力」は、どうすれば鍛えられるのか。
前Jリーグチェアマンの村井満は自ら調査し、ときに理不尽なアクシデントに見舞われるサッカーという競技において、「傾聴力」や「主張力」に長けた選手こそが心が折れたときにリバウンドメンタリティーを発揮し、それらに打ち勝つことができる-と説いたことがある。
中でも「傾聴力」、つまり、周囲の声、仲間、指導者の意見に素直に耳を傾ける力は、実は、プロアスリートで備わっている者は少ないといわれる。いわゆるプライドが邪魔をするというやつだ。
「傾聴力」と聞いて、今シーズンの阪神で最も印象深かったのが青柳晃洋のそれである。
開幕投手に指名されながらコロナ感染に遮られるという理不尽がのっけから襲った。これをはね返した青柳だが、しかし、後半戦7試合勝てない時期があった。僕からいわせてもらえれば、外的に理不尽な要素もあったのだが。
ここからは本紙虎番の取材で知った青柳の「傾聴力」である。
5回3失点で降板を命じられた夏場のDeNA戦の後、青柳は投手コーチ福原忍に言った。
「自分がカード頭にいることがチームにとって迷惑になるんだったら、(エースが担うべきカード頭の登板を誰か他の投手に)代えてください」
が、これを福原は一喝。
「結果が伴わなくてイライラしてるのは分かるけど、それはお前の本当の意見なのか?後輩はお前の姿勢を見ている」
ここで青柳はブラーヴォなリバウンドメンタリティーを発揮するのだ。続きは次回。 =敬称略=
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