「厳しめ」の流儀

 【9月10日】

 総裁選に出馬する岸田文雄といえば、選挙区が広島一区の人だから、例えカープが低迷しても悪口なんて言えない。これは臆測だけど、もしかしたら、鯉党だからこその厳しい叱咤ならアリなのか。

 表立ってご贔屓球団をあれこれ語れないのが政治家である。

 あんたに票入れよう思うとったのに、そんなふうに言いよるん?ほいじゃ、やめとくわ-なんて逃げられたら「お力添え」をお願いする地元遊説もわやだ。

 きのう当欄で、同じく総裁選に出馬する高市早苗のハナシを書いた。この方は奈良出身で生粋の阪神ファンを公言してきた人。でもカミングアウトしてからは、思わぬ苦労もあったという。

 高市早苗「小池さんのところは兵庫県だから、阪神ファンが票になるでしょ。私の場合、奈良で最初の選挙の時『野球はどこですか?』と聞かれて『もち、タイガースよ』と言ったら、抗議の電話が殺到して…。奈良県は保守王国で自民党が強くて、巨人、大鵬、卵焼きっていう安全パイに乗るようなところがあるみたいで、巨人ファンの絶対数のほうが多いの」

 小池百合子「知らなかった…」

 星野阪神が優勝した03年。虎党政治家を招待したデイリースポーツの正月座談会で、関西出身のおふたりがそんな掛け合いをしていた。東京都知事の小池は芦屋出身の阪神ファン。今岡誠(真訪=現ロッテヘッドコーチ)の後援会会長を歴任した事実を聞けば、G党の都民は…いや、選挙妨害になりかねないのでこのへんで。

 虎党の間で…というか、僕のツイッターにもよくこんなふうなリプがある。きっと、この夜も…。

 「とらほ~。広報紙さん、明日の紙面も派手によろしく」

 デイリー=球団広報紙??読者の認識はそれぞれだし、もちろん自由だけど、そう言われると、何だか批判を書けなくなったり?そもそも、デイリー票が減るんだったら〈悪口〉は書かない?

 確かに、取材のない〈批判〉は書かない。でも、いつ何時ももち上げるかといえば、ノーだ。賛辞だけが虎への「力添え」でないこと、それがかえって選手の逆風になること。長年の取材活動で分かったことでもある。

 東京五輪後、カード初戦の分が悪かった阪神が勝った。3連戦のアタマを獲れば狙える3タテだけど、この広島戦まで五輪後8カードの初戦は3勝5敗。V条件はこの夜のようにアタマを取れ-だ。

 「俺がきつく言えば他からはあまり(きつく)言われなくなる。俺が甘々だと、皆に言われる。守るという意味では、厳しめぐらいのほうがちょうどいいと思う」

 これは元サッカー日本代表で、現在スポーツキャスターで活躍する内田篤人がDAZNの冠番組で語っていたこと。選手に近い存在であればあるほど「厳しめ」であるべき-これがウッチーの流儀。サッカー担当時代、内田を取材したことがあったが、彼らしい持論だ。ご贔屓に厳しい目を向ける政治家も◎…そこに愛情があれば、票は集まるような。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス