Stay hungry!

 【7月19日】

 ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドから熱気あふれる写真を送ってくれた友人がいる。

 伊藤健治がその人…。

 元阪神タイガースの球団トレーナーである。

 Seattle Mariners Massage therapist(シアトルマリナーズ・マッサージセラピスト)

 おととし海を渡り、現在そんな肩書で菊池雄星らマリナーズ選手のコンディショニングを担う伊藤は、MLBオールスターゲームの「現場」に居た。

 先週、本場メジャーのホームランダービーにくぎ付けになった読者も多いと思う。僕もその一人だったけれど、フアン・ソトとの対戦で「疲れた~」と膝に手をやる大谷翔平にドリンクを手渡す菊池を見ながら、テレビ画面の中に伊藤の姿を探したプロ野球関係者も多かったのではないか。

 金本知憲、能見篤史、鳥谷敬らスター選手からの信頼も厚く、一昨年まで球団トレーナーとしてバリバリ活躍していた伊藤がなぜ、海を渡ったのか。

 現在、41歳。

 決して若いとはいえない…いやいや、そんなこと言っちゃ怒られるか。コロラドのスタンドから夢の祭典を見つめる彼に連絡すれば「こっちのオールスターを生で観るのは初めてなんですよ。打球も速いし、飛距離もすごい。ホームランダービーで大谷選手に勝ったソト選手の集中力はすごい!」と〈初々しさ〉の混じったワクワク感が返ってきた。

 「学生時代、卒業間近に先生に言われたひと言があるんですよ。

『あなたがこれからする仕事は、他人の人生の1ページに直接手を触れる仕事。それを忘れずにいれば大丈夫です』と…。まだまだですが、常にいろいろと勉強して挑戦していくことは大切かなと思っています」

 渡米した伊藤に聞いたことがある。目の前に安定した生活があるのに、この歳から新しいことを始める。そのバイタリティーはどこから沸いてくるのか。健治に「座右の銘」なんて聞いたことはないけれど、分かりやすくいえば、そんなものってあったりする?

 Stay hungry!

 Stay foolish!

 伊藤はそう言って笑った。

 もちろん、ジョークではない。

 これはかつてスティーブ・ジョブズが米スタンフォード大の卒業式で学生に語りかけた歴史的なスピーチのラストである。直訳すれば「ハングリーであれ。愚か者であれ」だけど、僕の解釈では「現状に満足するな。いくつになったって青臭くいろ」のような…。

 伊藤は「貪欲で、いろいろなことに挑戦していく。遊び心を持ちながら…みたいな感じですね」と言うが、彼は今まさにジョブズの言葉を実演しているように思う。

 伊藤健治を知る人達、そして、タイガースの選手にも伝えたい。今回はそんな思いで筆をとった。僕も健治の生き方に大いに影響を受けている一人である。=敬称略=

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